なぜ4階級制覇・井岡一翔は3階級制覇・田中恒成との大晦日決戦決定に超過激発言をしたのか?
「方向転換したというより、これは指名試合。(受けなければ)ベルトを返上するしかなくなってしまう。いろんなことを考えたが、タイトルを保持することが自分が目指す目標に進んでいきやすい。このコロナの状況では海外は難しい。僕にとっては日本人との試合はタイミング的に良かったかなと」 WBOには、スーパー王者が転級した場合、ランキング1位にして指名挑戦権を与えるルールがあり、田中はWBO世界フライ級のベルトを3度防衛すると返上し、井岡への挑戦権を手にした。井岡にとって避けられない試合であり、しかも、新型コロナ禍の影響で海外の選手を招聘することが難しい状況では選択の余地はなかったのである。 ただひとつ間違えば、このモチベーションは死角になる。 “嫌々”受けて立つ井岡と、憧れのボクサーの大物食いにギラギラしている田中とのモチベーションの差が、試合に影響を与えれば取り返しがつかなくなる。そういう小さな綻びが勝敗を分けるのがボクシングである。 だが、井岡は、こちらの質問を一蹴した。 「僕にとってメリットがない試合だけど、気持ちが落ちることはない」 今年2月に元パウンド・フォー・パウンドボクサーのローマン・ゴンザレス(ニカラグア)がWBAの同級タイトルをとり、井岡が一番のターゲットにしていたエストラーダは10月に元王者のカルロス・クアドラス(メキシコ)と防衛戦を行い、ダウンの応酬の激戦の末、タイトルを防衛。WBCは、現在、前王者のシーサケット・ソールンビサイ(タイ)との指名試合を指令しており、その勝者とロマゴンが統一戦を戦うプランが浮上するなどスーパーフライ級戦線が熱くなっている。 また昨年11月のWBSSのバンタム級決勝でWBA世界バンタム級スーパー、IBF世界同級王者の井上尚弥(大橋)と名勝負を演じたノニト・ドネア(フィリピン)が12月12日にWBC世界同級王者のノルディ・ウーバーリ(フランス)に挑戦するが、その後は、5階級制覇のうち、唯一暫定王者だったSフライ級にもう一階級落として参戦してくるという情報もあり、この階級にはタレントが集結する。 「しっかりと(他団体王者の)試合はチェックできていないけれど、情報は入っている。その統一戦線に入っていくための試合」(井岡)であるのならば負けるわけにはいかない。