4階級制覇王者の井岡一翔は難関のランキング1位の指名挑戦者に勝って愛する息子をリングに上げることができるのか?
大晦日に開催されるプロボクシングのトリプル世界戦(大田区総合体育館)の前日計量が30日、東京の品川プリンスホテルに立派な舞台が用意される中で行われ出場6選手共に一発でパスした。日本人初の4階級王者、WBO世界スーパーフライ級王者の井岡一翔(30、Reason大貴)は、ランキング1位の指名挑戦者、ジェイビエール・シントロン(24、プエルトリコ)を迎え初防衛戦に臨むが「明日の試合でこの1年が決まる」と並々ならぬ覚悟を示した。「簡単にはいかない厳しい試合になる」とも自己予想したが、果たして井岡は、難関の初防衛戦&指名試合をクリアできるのか。
「負けたら次はない」の覚悟
髪をカットし臨戦態勢を整えた井岡はリミットピッタリの52.1キロで計量器から降りた。表情はほとんど変えずトレーナーが用意したペットボトルの経口補水液を口にした。 「いいコンディションでこれた。残すところひとつだった計量もクリアした。ここからはリカバリーがポイント。うまく食べ物を吸収させていい(体重の)戻し方をしたい」 通常は計量後に約4キロ増やしてリングに上がるのが井岡のパターン。シントロンは間違いなくステップワークを使ってくるため、井岡にも追うスピード、運動量が要求され、体重の増加もいつもより軽めを意識するのか?とも考えられたが、「いつも通り。そこまで気にしていない。スピードで劣っているとも思えない」と答えた。 「明日の試合で、この1年というのが決まる。明日の結果が2019年のすべての答え。明日次第で2019年の4階級制覇と、プライベートのすべてが充実する」 その真意を問うと、こう続けた。 「わかりやすくいえば、明日の試合次第で4階級制覇の感動も薄まるし、いい勝ち方ならいい評価となる。1戦1戦が重要な試合。もちろん、負ければ次がない、との覚悟もある。4階級制覇で満足をしていない。そこを超越した強さを求め、僕が見せれるものを求めてやっている。僕のやってきたパフォーマンスに集中すれば、いい結果が出る。今年最後。熱い試合をして何かを感じてもらえるような試合をしたい」 井岡は自分自身へ暗示をかけているようだった。 日本人初の4階級制覇を成し遂げた6月のアストン・パリクテ(28、フィリピン)とのWBO世界スーパーフライ級王座決定戦は、偉業達成に恥じないベストバウトだった。技術戦に加え、勇敢を見せて、打ち合って最後はTKOに仕留めた。そしてプライベートでもモデル女性と再婚して、8月に長男・磨永翔(まなと)君を授かった。リング内外に充実した「2019年の井岡」という作品を完成させるには、通算8度目となる大晦日決戦で”有終の美”を飾らねばならない。