天皇陛下62歳誕生日会見(全文) 愛子さま20歳 「大人の仲間入りをすることになったことを感慨深く思う」
遠泳や平和への思い 愛子さまの印象深い思い出
幹事社:皇后さまは療養を続けながら陛下と公務に臨んでこられました。ご回復の状況はいかがでしょうか。長女の愛子さまは20歳を迎えられました。成年行事でのお姿を見て、どのように思われましたでしょうか。これまでの20年間を振り返り、印象深い思い出やオンライン授業が続く現在の学生生活、今後の歩みへの期待や結婚について、父親としての思いをお聞かせください。 天皇陛下:雅子は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による活動への制約などから、体調を整えにくくなっている面はありますが、種々の工夫や努力を重ねながら、幸いにして都内での式典やオンラインによる各地への訪問、新年ビデオメッセージなどに一緒に臨むことができました。養蚕については昨年、より多くの作業に取り組むことができ、楽しみながら作業している様子を見て、私もうれしく思いました。また、皇居への移転に伴い、生活環境が大きく変わる中で、自分なりに公務と生活のリズムを整えようと懸命に努力していると思います。しかしながら、いまだ回復の途上で体調には波があり、大きな行事の後には疲れがしばらく残る傾向にあります。これからも無理をせずに、できることを一つひとつ着実に積み重ねていってほしいと思います。 雅子はまた、私の日々の活動を支えてくれる大切な存在であるとともに、公私にわたり良き相談相手になってくれています。私も、今後とも出来る限り力になり、支えていきたいと思っております。国民の皆さんには、これまで温かく心を寄せていただいていることに改めて感謝の気持ちをお伝えするとともに、引き続き雅子の回復を温かく見守っていただければありがたく思います。 愛子は昨年12月に成年を迎えました。成年にあたっての感想の発表や成年の行事に臨むにあたり、緊張もあったと思いますが、なんとか無事に諸行事を終えることができ、私たちも安堵しました。また、いつの間にか20歳という年齢を迎え、大人の仲間入りをすることになったことを感慨深く思いました。日ごろから多くの人々に助けられ、支えられているということに愛子が感謝の気持ちを持っていることを、親としてもうれしく思っています。 印象深い思い出については、学校の水泳の授業で、小さい頃にはビート板を使ってプールで短い距離を泳いでいた愛子が、女子中等科時代、静岡県の沼津の海で3キロメートルの遠泳ができるようになった時や、中学の修学旅行で広島を訪れた際に強い衝撃を受け、平和への思いを文章にまとめた時などに成長を感じ、うれしく思ったことを覚えています。 愛子は一昨年、大学生になりましたが、新型コロナウイルス感染症の影響により、授業にはオンラインでの出席が続いています。2年生になり、演習の授業での発表があったり課題の提出などで忙しい毎日ですが、大学での勉学に一生懸命に取り組んでいます。 私自身の大学生活を振り返ってみますと、気がつけばもう40年くらいも前になりますが、大学ではさまざまな人たちと顔を合わせて授業を受けたり、放課後の部活動で一緒に参加したり、見ず知らずの人と学生食堂で隣り合ったり、新しい発見と経験の連続であったように思います。そういう意味でも愛子には、感染症が落ち着いていつの日かキャンパスに足を運べるようになると良いなとは思いますが、たとえどのような環境にあっても、実り多い学生生活を送ることができればと願っています。 愛子は家族との時間を大切にしてくれており、愛子と3人でいると、私たちの団らんは笑いの絶えない楽しいものになっています。昨年も述べました通り、愛子にはいろいろな方からたくさんのことを学び、さまざまな経験を積み重ねながら視野を広げ、自らの考えを深めていって欲しいと願っています。また今後、成年皇族として思いやりと感謝の気持ちを持ちながら、一つひとつの勤めを大切に果たして行ってもらいたいと思います。その過程で、私たちで相談に乗れることにはできる限りしていきたいと思います。