天皇陛下62歳誕生日会見(全文) 愛子さま20歳 「大人の仲間入りをすることになったことを感慨深く思う」
復興はまだ道半ば 引き続き被災地に心を寄せる
東日本大震災の発生から、間もなく11年を迎えます。この震災により、2万人を超える数多くの方が亡くなったり行方不明になったりしたことは、今思い出しても深く心が痛みます。その後の復興の過程で、人々の生活や産業を支える社会基盤の整備等は進んだものの、精神的なサポートを必要とする人が近年になってむしろ増えていると伺うなど、本当の意味での復興はまだ道半ばにあるものと思います。私は、雅子とともに引き続き被災地に心を寄せていくつもりです。 思い返せば、東日本大震災直後には現地に駆けつけたボランティアに多くの被災者が勇気づけられたものと思います。海外の多くの国々からも支援物資等が届けられ、ボランティアが被災地に駆けつけてくれました。先月の海底火山の噴火による被害が伝えられるトンガの皆さんからも、その時さまざまな支援をいただいたことは記憶に新しいところです。その時の感謝の気持ちは今なお色褪せるものではありません。ここに改めて、この度のトンガの噴火により被災された方々に心からのお見舞いをお伝えいたします。 東日本大震災の発生と同じ平成23年、トルコで起きた震災に日本から支援活動のために赴いていた宮崎淳さんは、余震により残念ながら現地で亡くなりました。舗装道路などのインフラも十分でない被災地において、見ず知らずのトルコの人々のために力を尽くし、亡くなったとして、当時のギュル大統領は「トルコ国民の心を動かす献身的な活動をした宮崎さんをいつまでも忘れない」と、上皇陛下に親書を送られました。そして以後、トルコの各地で宮崎さんの名を冠した公園や学校が開設されているとの報道に昨年接したことも、トルコの人々の温かい気持ちとともに印象に残りました。 災害により困難な状況に陥った人々を助けようと尽力する災害ボランティアの精神は、誠に尊いものです。日本の多くの人々が、国内外で災害ボランティア活動に従事してくれていることに敬意を表したいと思います。わが国では今後、いくつかの大きな地震の発生が予測されています。また近年、大きな被害をもたらす豪雨災害等が頻発しており、気候変動の影響により今後、気象災害のリスクは一層高まるといわれており、発災時に多くの人が助けを必要とする場面はより多くなると予想されます。そのため、私たち一人ひとりが防災や減災の意識を高め、災害に対して自らの備えをするとともに、どこかで災害が起きた時には、一人ひとりが自らのできる範囲で被災した人々に寄り添い、その助けとなるべく行動できるような社会であってほしいと願います。