天皇陛下62歳誕生日会見(全文) 愛子さま20歳 「大人の仲間入りをすることになったことを感慨深く思う」
国境を越えた選手同士の交流に感慨
昨年は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開かれました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大という、困難な状況の中での開催となりましたが、大会を無事に終えることを可能にした運営スタッフ、ボランティア、医療従事者、警備担当者など、多くの関係者の尽力に敬意を表したいと思います。 私たちもそうでしたが、参加した選手一人ひとりが力を尽くして競技に臨む姿から、新たな希望と勇気を見出された方も少なくなかったのではないかと思います。また、参加国の選手同士がお互いの健闘をたたえ合う姿や、例えば女子バスケットボールの表彰式の後で、日米仏3か国の選手全員が自然に入り混じって記念撮影に臨む姿など、国境を越えた選手同士の交流が各所で見られたことにも感慨を覚えました。 この度の北京での冬季オリンピックでも、選手同士の心温まる交流を目にしましたが、そのような光景を見ながら、私は50年前の札幌冬季オリンピックでの70メートル級スキージャンプで金メダルを取った笠谷幸生選手の健闘を称えて、笠谷選手を肩車したノルウェーのインゴルフ・モルク選手の姿を懐かしく思い出しました。国と国との間ではさまざまな緊張関係が今も存在しますが、人と人との交流が国や地域の境界を超えて、お互いを認め合う平和な世界につながってほしいと願っております。
オゾン層の回復は環境問題の改善に勇気
昨年も、現在人類が直面する最大の課題の一つとして気候変動問題に関心が集まりました。その解決に向けては、国、企業、研究機関、一般の人々など幅広い関係者が手を携えて、脱炭素社会の実現に取り組まなければなりません。そのことは時として乗り越えがたい壁のようにも見えますが、近年においてもわれわれはこのような課題に挑戦してきました。 例えば平成初期には、地表に降り注ぐ紫外線を増加させるオゾン層の破壊が地球環境問題として真っ先に挙げられる課題でしたが、数十年に及ぶ国際的な連携、協力やそのもとでのフロン回収技術等の企業の技術革新、消費者の理解と協力などにより、早い地域では2030年代にはオゾン層が1980年の水準にまで回復するとの見通しを国連の専門機関が示すほど、状況が改善していると聞きます。このオゾン層の回復は、地球規模で対策に臨んだ環境問題の改善の好事例として、気候変動対策に向けた努力が始まりつつある中で勇気を与えてくれるものです。 そのような中で昨年、真鍋淑郎博士が温暖化予測にも用いられた気候モデルの開発を評価され、ノーベル物理学賞を受賞されたことを喜ばしく思います。こうしたこれまでに蓄積してきた知見も十分に活かしながら、各国地域の関係者や一般の人々が協力して対策を進めるべく努力を続けることで、気候変動問題が改善していくことを心から願っています。