小児科医が「子どもの性被害」問題を「父親にも知ってほしい」と思うこれだけの理由
子どもへの性暴力事件が止まらない。2024年も子どもに対する性被害のニュースが多かった。 【写真】24歳大学院生が驚愕したフィンランド「5歳からの性教育」の中身 つい最近も、富山で実の娘に性的暴行を行い起訴された裁判の初公判で、娘は逆らえない状態ではなかったとして、実父が無罪を主張したというニュースが報道された。また、東京都の中学校の元校長が教え子の女性生徒に性的暴行をはたらいた事件の裁判で「女子生徒は抵抗しなかった」「恋愛していると思っていた」などと供述したものの、懲役9年の判決が出たというニュースが記憶に新しい。 ほかにも、故・ジャニーズ喜多川氏による一連の少年への性加害問題、保育士の男性による性的暴行事件や大手学習塾の講師による盗撮事件など、ここ数年、ほぼ毎週のように子どもが被害の性暴力事件が報道されている。あまりの事件の多さや犯人の身勝手さに「またか!」と憤るものの、いつのまにかその衝撃度は薄れ、この手の報道に私たちも“慣れて”しまっていないだろうか。 子どもへの性加害のなかで顕在化しているのは「氷山の一角の、その一角のうちのごく一部」と警鐘を鳴らすのは、ふらいと先生こと、小児科医・新生児科医の今西洋介医師。今回『小児科医「ふらいと先生」が教える みんなで守る子ども性被害』を上梓した今西先生に、この本を書いたきっかけや、子どもの性加害の現状、そして、特に「お父さんにこそ読んで欲しい」と考える理由についてうかがった。
3人の娘の父親として実感したこと
国内の複数のNICUで新生児医療に長年携わってきた『ふらいと先生』こと今西洋介医師は現在、渡米して公衆衛生学の社会人大学院生として、母親に関する疫学研究を行っている。そんな今西医師が子どもへの性加害に関する本を書いた理由とは? 「小児性暴力撲滅を願ってこの本を書いたひとつめの理由は、私自身が3人の子を持つ父である、ということです。 私自身が、子どもを性の対象とする大人の存在をはっきりと感じたのは、10年以上前のこと。当時2歳だった娘を公衆浴場に連れて行って、一緒に男湯の湯船につかっていたら、あきらかに娘をじっと見ている男に気が付きました。 その視線が親子をほほえましく見守る目でないことは、直感的にわかります。大切な娘が今、明らかに性的な対象として見られているという現実に強い憤りとショックを受けました。こんなに幼い子を性の対象にする人間が存在するということを、理屈ではなく空気で知った瞬間でした」(今西医師)