小児科医が「子どもの性被害」問題を「父親にも知ってほしい」と思うこれだけの理由
とくに父親に読んでほしい
「また、子どもの性被害の対象となるのは“女の子”というのも長らく、多くの人が抱いていた思い込みのひとつでしょう。2023年にジャニーズ性加害問題が表沙汰になったことで今まで見えなかった男の子への性加害の存在が、ようやく見えるようになってきましたが、これも『芸能界という特殊な世界で起きたこと』という認識は捨てるべきです。男児の性被害は、学校や習い事、そして家庭内でも起きています。 子どもの性加害についての講演をすると、よく男の子を持つ母親が「わが子が加害者になること」を心配する声が聞かれるのですが、それと同時に息子が被害者になるかもしれないことを胸に留めておいてほしいと思います。 そして、行きずりの性加害者がターゲットとするのは「父親と息子」の組み合わせであることが多いのも、知っていただきたい部分です。母親以上に父親は『わが子(とくに息子)が性被害に遇うかも』という意識が薄く、子どもから目を離しやすい傾向にあります。たとえばショッピングセンターの離れた場所にあるトイレにひとりでいかせたり、公園で見守っているときもスマホに気を取られたり……。母親に比べて不審者に気が付くのが遅れがちです。そんなお父さんたちにこそ、ぜひ本書を一読していただきたいと思います」(今西医師) 今西医師の著書『小児科医「ふらいと先生」が教える みんなで守る子ども性被害』では子どもの性被害にまつわる多くの調査結果をデータやグラフで示し、エビデンスに基づいた科学的な視点で小児性暴力とはなにか、どのような対策があるのかを掘り下げている。近々施行される日本版DBS法の「子ども性暴力防止法」のほか、子どもを性被害から守る海外の法制度や同意教育などにも詳しく触れられており、男性にも読みやすい。 「ただ父親自身が、この本を自分で手に取る機会はなかなか少ないでしょう。この記事を読んでくださった方が渡したり、テーブルの上に置いておくなどしていただけるとうれしいです。夫婦で読んで、話し合ってくだされば幸いです。 子どもの性被害が多発する社会を変える第一歩は、小児性暴力の実態について『大人が知ること』にあります。一緒に知り、自分に何ができるかを考えていきましょう」(今西医師) 『小児科医「ふらいと先生」が教える みんなで守る子ども性被害』(集英社) 14万人のXフォロワーがいる“ふらいと先生”こと小児科医・新生児科医の今西洋介医師が3人の娘を持つ父親として、また、医療従事者として、エビデンスに基づく小児性被害の実態についてまとめた1冊。統計として1日に1000人以上が性被害に遭う子どもがいるという現実をぜひ知ってほしい。
若尾 淳子(ライター)