東京五輪最終テストで豪州に勝利のなでしこジャパンのメダル可能性は?…「10番」岩渕真奈が感じた収穫と課題
東京五輪前で最後となる強化試合を勝利で終えた。志願する形でキッカーを担い、ゴール左隅へ確実に決めたPKが決勝点にもなった。それでも日本女子代表(なでしこジャパン)のエース、FW岩渕真奈(アーセナル)は心から喜べなかった。 サンガスタジアム by KYOCERAで14日に行われた、ともに東京五輪に出場するオーストラリア女子代表との国際親善試合。国際Aマッチで3試合連続ゴールを決め、チームを1-0の勝利に導いた岩渕は、ちょっぴり浮かない表情で第一声を発した。 「勝てたので、結果だけを見たらよかったとは思います」 2トップの一角として先発しながら、放ったシュートは後半9分に成功させたPKの一本だけで、8分後には他の3人の攻撃陣とともにベンチへ下がった。結果はともかく、内容的には不完全燃焼の思いを募らせたのだろう。再び反省の弁が口をついた。 「自分自身、すべてがよかったのかと言われると、まったくそうではないので。もう少し攻撃の回数であるとか、ボールに絡むプレーをしないといけないと感じていますし、チームとしても攻撃のバリエーションをもう少し増やしていかないと」 ピッチ上で精彩を欠いた理由のひとつに気象条件があったと、岩渕は苦笑しながら打ち明ける。ナイトゲームで行われたキックオフ時の気温は25.4度と昼間ほど暑くはなかったが、湿度71%に無風とまるで蒸し風呂のような状態になった。 「湿気がすごかった。昼間も昼間できついけど、夜だから大丈夫だと思っていた分、きつかったなと個人的には感じました。ただ、気候の部分も時間の部分も、そして相手の部分も自分たちにとってはすべてがポジティブ。この時期にこういう試合ができてよかった」 なでしこジャパンで受け継がれてきた歴史と伝統を背中に感じながら、キックオフを告げる笛を聞いた。東京五輪に臨むメンバーが正式発表された6月18日。それまで「8」が多かった岩渕の背番号が、大黒柱に託される「10」に変わった。 誰かが必ず背負う番号と言えばそれまでだが、なでしこジャパンの場合はやはり重みが違う。高倉麻子監督も「なでしこの象徴的な『10番』といえば、やはり澤さんになってくる」と2015年限りで引退したレジェンド、澤穂希さんの名前をあげる。 「彼女の後に『10番』を背負う選手は、私のなかでもとても重い意味があった。チームの発足当時から岩渕は候補の一人でしたが、どの選手もそうですけど、チームを背負う顔になるにはピッチ上でのパフォーマンスのみならず、人間的にも成熟したときだと思っていました。なので、意図的に『8番』を背負ってもらい、成長を待っていました」