東京五輪最終テストで豪州に勝利のなでしこジャパンのメダル可能性は?…「10番」岩渕真奈が感じた収穫と課題
東京五輪イヤーを迎え、4月と6月に2試合ずつの国際Aマッチが組まれた。すべての試合を大差で勝ってきたなかで、高倉監督の目には「パフォーマンスだけでなく、合宿中の言動に強い自覚を感じた」といよいよ機は熟したと映った。 28歳になった岩渕自身にも、期する思いがあった。澤さんが大会MVPと得点王を獲得し、なでしこジャパンを歓喜のワールドカップ制覇に導いてから10年。当時を知る選手は自身と、キャプテンのDF熊谷紗希(バイエルン・ミュンヘン)だけになった。 バトンを受け継いだ2人で仲間たちに背中を見せていかなければいけない、という思いが無意識のうちに表情に出ていたのか。左サイドからMF長谷川唯(ACミラン)が上げたクロスが、ペナルティーエリア内で相手選手の手に当たった瞬間だった。 PKキッカーは事前に決まっていなかった。それでも、岩渕の脳裏に「(ここは)ちょっと蹴りたいな」という思いが頭をもたげた。なでしこの「10番」とともに臨む初めてのゲームで、ボールを拾った長谷川から以心伝心で大役を託された。 「(長谷川)唯が『ブチさん』と言ってくれたので。蹴らせてくれた仲間に感謝です」 最新のFIFA女子世界ランキングで10位のなでしこが、今年に入って大勝したパラグアイは50位、パナマは60位、ウクライナは31位、メキシコは28位とすべて下位に位置していた。対照的にオーストラリアは9位と初めてとなる骨のある相手だった。 メンバー決定後の事前キャンプで、男子高校チームとの練習試合を2度設定。東京五輪本番でなでしこを待ち構える、体格やパワー、スピードで上回られる相手を想定した練習を積んできた高倉監督は、オーストラリア攻撃陣を零封した守りに及第点を与えた。 「球際で当たったときなどに、体格差ではね飛ばされる状況は多く見られました。ただ、男子との練習試合でもそうでしたけど、ゴール前にロングボールを放り込まれるとかクロスを上げられた状況でも、チームとして守備をすることに関しては集中力が上がったし、相手選手に最後までやらせない粘り強さは評価できると思っています」 1週間後の21日に迫った東京五輪のグループリーグ初戦で対戦する、カナダ女子代表のFIFA女子世界ランクは8位。24日の第2戦(ともに札幌ドーム)で対戦するイングランド女子代表は同6位と、ともになでしこジャパンを上回っている。