ハビタットスタイル提唱者・河野忠賢さんによる多肉植物の自生地の話。貴重な写真も公開【趣味の園芸8月号こぼれ話・後編】
河:光堂は、数ある多肉植物のなかで私が最も敬愛する植物です。その名のとおり、多肉植物の聖地ナマクアランドを象徴する植物です。その佇まい、美しさにずっと魅了され続けています。 ところで、白い石英の岩場の陰には、こんな幼い株も隠れているんですよ。 編:これは愛おしいなぁ。熱をためない白い石英の岩場の陰で、小さい苗の時期をやり過ごしているのがよくわかります。直射日光が当たり続けるような場所や、熱がたまりやすい場所に落ちたタネは、たとえ発芽してもすぐに枯れてしまうケースがたくさんあるんでしょうね。こうして生き延びた苗は応援したくなります。 河:可愛いでしょう? 過酷な環境のなかでも、こうしてギリギリ生き延びることができる場所に根づいて生命をつないでいる。自生地では、大きな個体に比べて小さな芽生えや幼い苗を見つけることは、そう簡単ではありません。自生地でこうして健気に生きる若苗を見つけることは、つまり世代交代が起きていることを知ることです。それを目の当たりにできるのは、大いなる喜びです。
ナマクアランド最北、オレンジ河流域で
河:さて、次はこれ、テキストでも簡単にご紹介しましたが、ユーフォルビア・ビローサです。光堂とは別の場所ですが、同じくナマクアランド北部の極めて乾燥したエリアに、高さ2m以上あるような株が点々と生えていました。和名では矢毒キリンと呼ばれ、その乳液が強い毒性を持つことで知られています。その名のとおり、先住民が矢じりにこの乳液をつけて狩猟に利用したといわれています。ユーフォルビア属の植物はたいてい毒性のある乳液をもちますが、矢毒キリンは特に強い毒性をもっているようですね。 編:近づいて見ると、鋭いとげが目立ちますね。まがまがしい和名とも相まって、個人的には手元に置いて育てるのははばかられる気がします。 河:ほかの種類も見てみましょうか。ナマクアランドの北端には、ナミビアとの国境を形成するオレンジ河が流れていて、この河の流域には多種多様な植物が見られます。先に紹介した光堂や、巨大なアロエ・ピランシーなど、世界中でここにしか見られない種の宝庫です。 編:8月号にもオレンジ河の話がありましたが、この河が国境になって、河の南側が南アフリカ、北側がナミビアというわけですね。