自民総裁選 所見発表演説会(全文4完)人口減少は国家の危機
コロナ問題以上に重要なのが人口減少
このようなコロナ対策を進めることは経済対策でもあります。世界では長引くコロナ禍によって貯蓄が異常に増えていくという強制預金という現象が起きています。アメリカなどはコロナ後の経済再開のブースターの役割を果たしています。これは日本にも当てはまることであります。このような出口戦略をしっかりと見据えたコロナ対策を、強いリーダーシップを持って進めていきたいと思っています。 コロナ対策を進めていくと同時に、ある意味でコロナ問題以上に重要な問題に対しても政府を挙げて取り組んでいきます。それは人口減少です。私が総裁になったら、まずは人口減少というものを経済問題、安全保障の問題として扱い、国民にもそのような理解を強く持っていただくような啓発を進め、人口減少を止めます。これまで人口減少、つまり少子化対策というものは、女性の出産、子育て支援や男性の育児参加など、厚生労働行政が担ってまいりました。しかし、その認識を改めて、これが国家の危機だという位置付けを明確にいたします。それが決して大げさなことではないということは、データを見れば一目瞭然です。例えば来年の出生数は約70万人になるということがいわれているところです。戦後、あの厳しい、焼け野原になった戦後の次の年の出生数は270万人でございました。つまり、そこから、これから生まれる子供は4分の1になってしまっているわけであります。このことを実際、寿命などでお亡くなりになる方たちと差し引きますと、毎年、鳥取県と同じ人口が日本から消えていっていることになります。
子供への投資を積極的に行う
国家というものを構成する3要素は、領土、国民、主権であります。領土と主権が侵害される危機に関しては、これまで自民党は非常に積極的に取り組んできたと思っています。私が総裁になっても、防災、減災、国土強靱化、しっかり加速させていきます。日本の主権を脅かすようなものには毅然とした態度で立ち向かってまいります。しかし3要素の1つである国民はどうでしょうか。侵害をされているどころか一気に底抜けをしてしまうほど急速に減少が進んでいます。これを国家の危機と呼ばずして皆さんはどうお考えになっておられるのでしょうか。この危機に対して深刻になるのではなく、ぜひ真剣に取り組んでまいりたいと思います。 まず消費者と労働者が減少いたしますので、経済には大打撃です。生産年齢人口は2050年には5000万人を割り込むといわれています。当然GDPにも財政にも大きなリスクです。また、それだけ現役世代が減るわけですから、自衛隊や海上保安庁、さらには警察、消防などの安全保障や治安に関わる組織でも人手不足が問題になっていくでしょう。安全保障や防災という点でも大変なリスクが高まります。 このような国家の危機に対応していくためにどうするのかというと「こどもまんなか」を成長戦略に位置付けて推進をしてまいります。子供の幸福度が高い、貧困度が低い国は出生率が改善しているというデータがあります。実は子供というのは国の持続性を担保する要素です。そこで子供の支援の司令塔として、こども庁を設立し、教育、保育、さらには貧困問題の解消など、子供への投資を積極的に行ってまいります。 このような形で人口減少問題への積極的な取り組みや子供支援などをするということは、日本の持続可能性を世界に示すということなので、日本への投資意欲も高まってくるはずです。今の日本は海外から世界一少子化、高齢化が進行した国というイメージが強い。それを人口減少問題を子供への大胆な投資で乗り越えた国という将来性のある国へ変えていくんです。そして子供支援とともに進めていくのは、多様性の象徴である私たち女性の社会進出です。人口減少問題のみならず、これからの日本の成長の鍵は、これまで政策の主役になることが少なかった子供や女性の中にあるのです。さまざまな分野で女性の社会進出は進んできていますが、国際社会に比べては、まだまだといえます。