「密をどう避ける」コロナ禍で選挙戦はどう変わった?【#コロナとどう暮らす】
新型コロナウイルスの影響は、民主主義の根幹をなすものである選挙にも及んだ。国民が政治に参加し、意思を示す最大の機会である選挙の現場で、感染拡大を防ぐためにどのような苦労があったのだろうか。有権者が出向く投票所や立候補者が戦った選挙戦では、これまでとは違う選挙の風景があったようだ。 【動画】小池知事、オンラインで「ウィズコロナの選挙活動」公務優先とも強調
投票所を「感染拡大の場」にしない
自民党衆院議員で環境相などを務めた望月義夫氏の死去に伴い、4月26日に衆議院補欠選挙の投開票が行われた静岡4区(静岡市清水区、富士宮市など)。告示(4月14日)の2日後に、政府が緊急事態宣言の対象を全国に拡大するなど、新型コロナの感染拡大の勢いがまだまだ著しい時期での選挙となった。 静岡県選挙管理委員会の担当者は「まず消毒液の確保、という問題にぶつかった。(急激な需要増で)まだ消毒液が市場に流通していない時期。なんとか確保できたのは告示日ギリギリだった」と振り返る。 コロナ対策としては、まず投票所を「感染拡大の場」としないことを心掛けたという。従事者に手洗い、うがいなど感染予防を徹底するように心がけさせ、投票所は換気した上で、有権者用の使い捨て手袋を用意した。会話が発生しそうな受付は、ビニールによるシールドも張った。 また、普段であれば隣同士で有権者の肩が触れ合うような記載台も、ガムテープでバツ印を付けて間隔を空け、鉛筆などの定期的な消毒も行った。 さらに、こうした投票所での対策のほかに進めたのが、期日前投票のススメだ。自宅の近所にある投票所と比べ、期日前投票を行うことができる場所は基本的に数が少なく、限られている。このため、投票箱や名簿など投票に必要なものを積んだバスやミニバンで、事前に指定した日時に駐車場などの広いスペースがある場所に赴き、臨時の移動期日前投票所を10数か所、設置した。 静岡県選管の担当者は「密を作らない、有権者に安心感を与える、作業従事者の安全を確保する。こうしたことが対策のポイントだったかと思う。他の(参考)事例がたくさんあるわけでもなく、状況も刻一刻と変わっていく中だったので、難しかった」と振り返る。 任期満了に伴い、6月7日に投開票された沖縄県議会議員選挙(定数48)でも、投票時の記載台の間隔を空ける、投票所の換気を徹底する、期日前投票利用を呼びかける――など、静岡県と同様の取り組みが行われている。期日前投票の利用者は4年前の県議会議員選挙は14%だったのが、19%にアップしたという。 また、独自の取り組みとして、62万本の使い捨て鉛筆を一括調達し、投票所に届けたという。これについては、「感染拡大を防ぐ、というよりは、有権者に安心感を与えたかった」(沖縄県選管)という狙いだったという。 このほか、開票所でもスタッフをいつもより減らしたり、作業台の間隔を広めに取ったりするなどの対策を講じた。開票作業がいつもより遅くなることも想定していたが、作業の効率化を進めたこともあって、思ったより早く、ほぼ通常と変わらない時間で開票作業は完了したという。