「密をどう避ける」コロナ禍で選挙戦はどう変わった?【#コロナとどう暮らす】
期日前投票は伸びたが投票率は最低
このような両県の選管の取り組みにもかかわらず、低迷したのが投票率だ。 静岡4区補選の投票率は34.10%。補選のため、純粋な比較はできないが前回比はマイナス19.6ポイントで、静岡の選挙区割りが現在の8区になってから、最も低い数字だった。 また、期日前投票者数は増えた沖縄県議選だが、投票率は46.96%で前回比マイナス6.35ポイント。こちらも過去最低だった。沖縄県選管によると、県議選で50%を割り込んだのも初めてのことだという。 沖縄県選管の担当者は「感染への不安を払しょくしきれなかった部分があったと思う。また、普段であれば、選挙前などに行っている啓発イベントができなかったことも響いた。今回の県議選に向けて、若者から提案があったイベントを企画していたのだが、(コロナ禍で)実施できなかった」と悔しそうに話している。
握手も街頭演説もできず、候補者「難しかった」
実際にコロナ禍の中で選挙戦を戦った候補者は、何を感じたのだろうか。 静岡4区補選に、野党統一候補として臨んだ無所属新人の田中健氏は「『ステイホーム』、『家にいましょう』という中で、有権者に支持を訴えるのは難しかった」と振り返る。 日中は街頭に出ても握手することはできない。支援者を集めた集会を行うこともできない。街頭を一日20~30か所まわって辻立ちしたが、応援弁士はおろか、スタッフ以外に話を聞いてくれる人がいないこともしばしば。それでも、家の中にいるであろう有権者に向けて、思いのたけを必死に訴えたが、不安はつきまとった。 「過去の選挙では、握手して、街頭に集まってもらって熱を伝えていく、ということでやってきたけどそれができない。どこまで思いが届いているのか、反応が分からなかった。実際、選挙をやったかやってないのか分からない、という声を選挙後に聞いた」 「新人の候補としては、無党派層に訴えなければいけない。だから、不特定多数の人に訴える場が制限されたことは厳しかった。私の場合、最初はとにかく野党の一本化を目指す。そして、本選にもつなげていくという大きな目標と思いがあった。紆余曲折はあったが、最終的に野党統一を実現することはできた。本来であれば、これでコロナがなければ、野党の幹部が続々と集まって訴えることで、無党派層や多くの人に興味を持ってもらい、投票率のアップにつなげていきたかったが、それが崩れてしまった」 もちろん、田中氏はTwitter、Facebook、Instagram、YouTube、LINE公式アカウント(公式LINE)などインターネットを利用した選挙運動も行った。 「野党統一候補なので、党派を超えて多くの議員と毎日生放送をしていた。毎日(夜)8時以降に1時間生放送。最終日には午前0時まで4時間生放送。新人候補でありながら、各党の党首クラスの議員と毎日1時間議論できたというのは、とても良い経験になった」 SNSや動画配信を使った経験は今後も生かしていきたいという田中氏だが、その一方で、いろいろ問題点も見えてきたようだ。 「Twitterでも選挙期間中で370万のインプレッションが付いたものがあった。また、そこから公式LINEにつないで、ダイレクトにメッセージを発信できた。実際に獲得した3万8566票という票数以上に、有権者の声を聞くという意味で、SNSなどにはすごい可能性があると感じた。しかし、高齢者の方をはじめネットを見ていない方も少なくない。選挙運動にどれだけ生かせるのかというと、地区が限定された小選挙区では効果は限定的だ」 さらに、田中氏は5月末、ある学会の研究会で緊急事態宣言下の選挙について報告。今回の自身の選挙運動を通じて、現在の選挙制度そのものが民意を反映する仕組みになっていないことが問題ではないか、という思いを持つに至ったという。 「コロナで自粛しなければいけない。それでも民主主義の権利を担保するにはどうしたらよいのか。今回は特殊なケースだった、と片付けるのではなく、しっかり考えていかないといけない。この機会に、選挙制度も今の時代に合った形をもう一度考えていかないといけない。そういったことに改めて気付かせてくれた選挙でもあった」 ※この記事のコメント欄に、さらに知りたいことや専門家に聞いてみたいことなどがあればぜひお書きください。次の記事作成のヒントにさせていただきます。