なぜヤクルトはCS最終S“開幕戦”で巨人に快勝したのか…奥川の「マダックス」だけではなかった勝利理由
守備面では、ヨーイドンでセンターへ抜けそうだった松原の打球を処理したショート西浦の地味な好プレーと、得点にはつながらなかったが、4回の村上の走塁が光った。 高津監督は4回裏一死一塁から打者中村でカウント3-1からエンドランを仕掛けた。その外角のスライダーを小林が後逸。記録は暴投だったが、ミットの届いていた小林が止めなければならないボールだった。するとスタートを切っていた一塁走者の村上は迷わず一気に三塁まで進塁したのだ。結局、中村が四球を選んだが、オスナが三振。さらに西浦が申告敬遠されて奥川が二飛に倒れ得点にはつながらなかったが、高代氏は、「村上は、打者のインパクトの瞬間を確認するというエンドランの走者の基本作業をしていたから三塁へいく判断ができた。ヤクルトがやるべき野球をしている証拠。短期決戦ではミスのない方が勝つ」と解説した。 そして高代氏は、短期決戦に強い原采配の迷いも気になったという。 前出した3点を追う3回無死一塁から小林が三振、続く山口がバントに失敗した場面だ。 「奥川からは一気に3点は難しい。まだ3回。1点、1点を積み重ねてプレッシャーをかけるしかない。事実、阪神戦で巨人はそういう戦いをしてきた。ネクストの山口のところに代打立岡が用意されていたので小林にバントをさせるのかと思ったが、打たせて三振だった。打たせるのであれば代打で良かったのではないか。結局、得点圏に送れず山口をそのまま打席に立たせた。原監督の迷いの裏には、CSファイナルSが6戦あり、投手力への不安ということが頭をよぎったのかもしれない」 1勝のアドバンテージを持つヤクルトは今日11日に連勝すれば王手となる。先発は、24歳の左腕、高橋奎。今季は13試合に先発して4勝1敗、防御率2.87の成績だが、優勝を決めた横浜DeNAでは、スペシャルな中継ぎとして2イニングを任されるなど高津監督の信頼は厚い。一方の背水の巨人は、中4日でCSファーストSで阪神を相手に今季一番の投球を見せた菅野を立てる。万全を期して中5日で第3戦に先発させてもよかったはずだが、「流れを失えば終わり」と考えて勝負をかけたと推測される。 「ヤクルトが有利となったことに変わりはないが、ここで菅野が止めればわからなくなる。いずれにしろ3戦目以降は打ち合いになると思う。巨人はスイングが大きくなっている不振の坂本の復調がポイントになるのではないか」とは高代氏の予想。 神宮の社に奥川の明るい声が響いた。 「なんとかチームに勢いをつけられるような投球ができればと思っていたので、これで勢いづいて日本シリーズに出場できればと思います。(チームは)明日からも一生懸命戦います。チームスワローズで、ファンの皆さんと選手が一体となって日本シリーズ出場、そして日本一になれるように頑張りましょう」 奥川のコメントに代表される明るさと勢いがヤクルトの強み。今日の試合が日本シリーズ進出チームを決める重要な一戦となりそうだ。 (文責・論スポ、スポーツタイムズ通信社)