“神様と人、想いが交差する場所” 祐徳稲荷神社の知られざる役割【西彼・時津町・祐徳稲荷神社】
長崎県佐世保市出身の漫画家でイラストレーターの大原由軌子さんが長崎の街を巡りながら目的地である神社で「御朱印」を集める企画をシリーズで紹介する。今回は西彼・時津町の祐徳稲荷神社を目指す。(2021年5月取材) 【画像】まるで狐のマンション?!たくさんの神様に会える神社
集まる狐の神様、人々の想いが交差する聖地
西彼・時津町にある祐徳稲荷神社の御朱印は、2匹の狐が描かれたものだ。シンプルなだけに朱色が映える。 大原さんは時津町名物の落ちそうで落ちない岩として知られる「鯖くさらかし岩」がモチーフになっているお守りも手に取った。お守りには「どがんしても落ちな岩(いわ)!」と書かれ、合格祈願のお守りになっている。境内にある御神木のマキの木は樹齢100年以上と言われていて、コケに覆われたその姿は美しく別世界が広がっていた。 さらに境内の奥には、驚くべき光景が待っていた。祐徳稲荷神社の尾道和泉宮司が「狐さんがたくさんいるんですよ」と見せてくれたのが「狐塚(きつねづか)」だ。狐塚は家庭で祭っていた神様の使いの狐が集まっている。祐徳稲荷神社では、引っ越しや土地の開発などの色々な事情でお祭りできない神様を預かっているのだ。 祐徳稲荷神社では、引っ越しや土地の開発などの色々な事情でお祭りできない神様を預かっている。狐の神様たちがお引越しをして集まってきたこの場所に来れば、再び神様に会いにくることができるのだ。大原さんは、色々な神様が集まり住んでいる、いわば「狐のマンション」のような場所だと表現した。
移住者の目線で見る、神様の「移住」
長崎に移住して10年目の大原さんは「私も移住してきた人間としていろんなことを考えさせられる」と神様の「移住」と人間の移住を重ね合わせ、新しい土地に移り住むことの意味、そこでの生活のあり方、自分にできることは何か、考えるきっかけになったようだ。 家庭や地域から離れることを余儀なくされた神様たち。その別れに「すごく胸を痛めてられてる方も」いる。しかし、この神社で大切に祀られていることを知り、また会いに来ることができる。それは神様を手放さざるを得なかった人々の心の傷を癒やす機会となっているのかもしれない。