なぜ日本人は「地学」を勉強しないのか...知らないまま大人になると「ヤバい」と断言できる理由
地球46億年の歴史、地震のメカニズム、気候変動のからくり、日本列島の特徴、宇宙の成り立ちと進化……誰もが知っておくべき地球科学の教養。そのエッセンスが凝縮されているのが、「高校地学」だ。しかし悲しいかな、その履修率は他の理科系の科目にくらべて低い。 【写真】なぜ日本には地震が多いのか…地球科学で見る「列島の異変」と「次の大地震」 本連載では、「最高の教養」である高校地学の中身を、わかりやすくご紹介する。地質学、古生物学、自然地理学、気象学、天文学、宇宙論など、幅広い学問分野の最新成果がまとまったその魅力を、存分にお楽しみいただきたい。 本記事は、『みんなの高校地学 おもしろくて役に立つ、地球と宇宙の全常識』(鎌田浩毅/蜷川雅晴・著)を一部抜粋・再編集したものです。
「地を学ぶ」身近な科学
地学とは、地球を対象とした科学の一分野です。日本では高校理科の科目名として「地学」があり、大学の講義名として「地球科学」という呼び名が一般的に使われています。 「地を学ぶ」と書くように、地学はわれわれ人類が生きている基盤を知るための学問です。具体的には、硬い岩盤のある地球(「固体地球」)、水や空気が流れている海洋と大気(「流体地球」)がどうしてできたのかを学びます。さらに、固体地球や流体地球を取り囲む太陽系の成り立ちを考え、その先は銀河系、宇宙へと広がっていきます。 トピックも非常に多様で、気象、地震や火山の災害、鉱産資源、エネルギー資源など、身近な題材に事欠きません。そして学問の分野としては、地質学、鉱物学、地球物理学、地球化学、古生物学、自然地理学、気象学、海洋学、天文学、宇宙論などを含んでいます。 その結果、地学は人間を取り巻く自然界のすべてを扱う極めて幅の広い学問となりました。われわれの生活基盤のメカニズムにも関連するものですから、老若男女を問わず、必ず興味を持ってもらえる内容になっていると思います。
「大地変動の時代」に突入した日本列島
近年、日本列島で大きな話題となっている「地震」もその一部です。 2024年の元日、石川県の能登半島を震源とする大きな地震が発生し、輪島市と志賀町で最大震度7が記録されたほか、広い範囲で強い揺れが観測されました。ほぼ1年前の出来事です。 同年8月8日には、南海トラフ震源域の西端である宮崎県の日向灘を震源とする最大震度6弱の地震が発生し、「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が初めて発令されました。国外に目を向けると、4月3日に台湾で震度6強の大地震が発生し、多くの被害が出ています。 いずれも記憶に新しい出来事だと思います。頻発する地震に不安を感じる人も少なくないのではないでしょうか。 次の記事で説明するように、2011年に起きた東日本大震災を境として、日本列島は千年ぶりの「大地変動の時代」に突入しました。具体的には、マグニチュード9の巨大地震によって地盤が東に5メートルほど引き延ばされ、不安定な状態が続いています。 それが元に戻っていく過程で、地震や火山の噴火がしばらくのあいだ増えるのです。地学の専門家のなかには、巨大地震に関連する長期変動のひとつとして、近い将来、「南海トラフ巨大地震」と「首都直下地震」が起きると予想している人も数多くいます。 こうした超弩級の地震が発生すると、火山の噴火を誘発することが経験的に知られています。たとえば、富士山をはじめとして日本列島に111ヵ所もある活火山です。今後数十年のあいだ、日本列島では引き続いて地震や津波、噴火に見舞われる可能性が高いのです。