なぜ日本人は「地学」を勉強しないのか...知らないまま大人になると「ヤバい」と断言できる理由
最大の備えとなる「教養としての地学」
このように書くと、絶望的に思われるかもしれませんが、過度に恐れる必要はありません。地下の動きと地球環境に対する知識があれば、いざという時に適切な行動が取れるようになります。それを身につける一番手っ取り早い手段が、「高校地学」を学習することなのです。 地学には「過去は未来を解く鍵」というフレーズがあります。過去に発生した現象をくわしく解析することによって、確度の高い将来予測を行うという意味です。とはいえ、自然が引き起こす巨大災害を、人が完全に防ぐことは不可能でしょう。われわれは災害をできるかぎり減らすこと、すなわち「減災」しかできません。 では、最も効果的な「減災」の手段とは何でしょうか。結論から言えば、それはやはり「地学を勉強すること」だと言えます。地学はあなたの身を守る「実用知」なのです。近い将来、必ず対応を迫られることになる地球温暖化問題についても、その基礎知識を身につけるという意味で、それは間違いなく役に立つでしょう。 より広い視点に立って、私たち筆者が地学を通じて学んでほしいと願う最大のテーマは、「人類の存立基盤について知ってもらうこと」です。これを一言で表すと、「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」を知ること、となるでしょう。 このフレーズは、フランス・ポスト印象派の画家ポール・ゴーギャンが1897~98年に描いた大作絵画のタイトルで、地球科学者が最も好きな文句でもあります。46億年におよぶ「地球の歴史」のなかに、自分たち人類を位置づけて物事を考えることが非常に大切だからです。 重要なことは、われわれの暮らす地球にまつわる自然現象をどのように見るかであり、その過程で科学的に考える作業が必須になります。つまり、地球や宇宙について、個々の現象を暗記するのではなく、こうした現象がどのように、なぜ起きるかを複眼的、多面的に把握することが大事なのです。