ペルム紀末の生物大虐殺の犯人は? 過去の地球温暖化から現在の環境問題を考える
ペルム紀末の生物大絶滅
古生代全般を通して海環境で大繁栄を遂げた三葉虫。しかし全ての種がペルム紀末までに絶滅した。新しい研究はその原因が地球規模で起きた温暖化現象だったと提案している。 生物進化史上「最大規模の大絶滅」はぺルム紀後期に起きたことが化石記録において知られている。そのスケールは白亜紀末の恐竜やアンモナイト、その他の海生動物などが滅んだ「白亜紀末大絶滅」より規模が桁違いに大きかった。 「97%くらいの海生動物種がこの大絶滅の時に滅んだ」。こうした推定値さえ一部の研究者から発表されている。こうした値は(私の知る限り)例えばデータのもとになる化石の質、またはどの生物グループを組み入れるかによって少しばらつきが出てくるようで、もう少し絶滅率が低かったとする研究結果も出されている。そのため全てを鵜呑みにはしないという少しばかりの心構えが必要かもしれない。 それでも、化石記録によると、ペルム紀末を境に多数の生物グループが地球規模で絶滅したことは間違いないといえる。 一連の被害者の中に例えば古生代全般を通して大繁栄を遂げた三葉虫がいる。全ての三葉虫の種は、その後の時代の化石記録から姿を消している。獰猛で大型捕食者であった海サソリの種も全て死に絶えた。古生代化石の代表的な顔触れであるサンゴやウミユリなどの仲間も壊滅的なダメージを受けた。多数のプランクトンの仲間も消え失せた。70%近くの海生脊椎動物(主に魚類)の種も滅んだ。 ペルム紀の大絶滅の詳細は書きはじめるとかなり長くなる(また機会を見つけてあらためて記してみたい)。ここでは、大絶滅パターンの概要をエスプレッソ・コーヒーのように抽出してみる。 まず上に述べたように多くの海生生物が壊滅的なダメージを受けたようだ。その規模は海洋をまたいでみられる。この大絶滅が起きて再びたくさんの種が出現するまでに400万~500万年近くを要したことを化石記録は示している。 陸地の生態系にも被害があった。多くの大型の昆虫が姿を消した。植物相にも影響があった(特にシダ類が大きなダメージを受けた)。興味深いことにどういうわけか三畳紀初期の時代の地層において石炭を含む地層が、突然姿を消している事実が以前から指摘されている。このパターンは植物相の変遷・絶滅と深く関わっているとみて間違いない。 大型両生類や哺乳類の非常に遠い祖先とされる単弓類、爬虫類の仲間も多数被害を受けている。 こうした海陸両方の絶滅は、「比較的長期間に及んだ」という研究結果も報告されている。具体的には800万~1000万年の間にわたったようだ。2回の大きな絶滅イベントがあったと唱える古生物学者もいる。 こうした絶滅パターンをもとに推理を働かせてみる。ペルム紀後期の地球には、何か「長期間」にわたる環境の大変化が起きたといえるのではないだろうか? 例えば今回の研究チーム(Penn等2018)が指摘しているように「地球規模の温暖化」が真実なら、この現象はかなり長い期間において進行した可能性はなかっただろうか?