ペルム紀末の生物大虐殺の犯人は? 過去の地球温暖化から現在の環境問題を考える
ペルム紀末温暖化現象の最新研究
太古の地球温暖化現象に関する非常に興味深い研究が、昨年12月7日付の学術雑誌「SCIENCE」において発表された。 アメリカ西海岸のワシントン大学の博士課程の学生が中心となった研究チームは、古生代の終末にあたるペルム紀 末期 に起きた「グローバル規模の温暖化現象が生物大絶滅の引き金になった」とするアイデアを提出した(Penn等2018)。 注:Justin L. Penn, Curtis Deutsch, Jonathan L. Payne, Erik A. Sperling. (2018) Temperature-dependent hypoxia explains biogeography and severity of end-Permian marine mass extinction. Science 362: eaat1327. この論文はペルム紀末頃(約2億5200万年前)の地球全体における気温の上昇度を、コンピューターを使ってモデル化・ビジュアル化している。論文内の地球地図をもとにしたデータは特に高緯度のエリアにおいて、気温の上昇レベルが顕著だったことを示している。 研究チームはペルム紀末の海生生物の化石記録のデータも分析している。一連の化石種(または属)の地理的分布パターンは、こうした高緯度の生物群ほど、より大きなダメージを受けたことを示しているという。特に緯度が50度以上の地域に棲んでいた海生生物のうち、80%近くの属が滅んだそうだ。同時期に赤道近くのエリアに生息していた海生生物は、40~60%くらいのグループが姿を消したとされる。 絶滅は地球全体で起きたが、特にそれまで寒冷地に棲んでいたもの、深海に棲んでいたものが、より壊滅的なダメージを受けたことを研究チームは指摘している。この絶滅パターンははたして何を暗示しているのだろうか? この研究チームの解釈を伝える前に、是非一度読者の方に推理をはたらかせてもらいたい。 この研究チームの計算によると当時の海水の温度(海面付近の層)はなんと10度近く上昇したそうだ。広範囲の海洋の水温が40度近くに達していた可能性があるという。 もしこれだけの変化が短期間に起きたとすれば、多くの海生生物は大パニックに見舞われたことだろう。物理的・生理学的に温度の変化に対応できなくなったものがいたはずだ。プランクトンなどの生物相が変われば、食物連鎖全体にひずみも生まれるだろう。海水の化学成分に変化が起こった可能性もある。海水温の変化は海洋における潮流パターン(=陸地の気候にも大きく関わる)に影響を与えたことも推察される。 この論文内においてもう一つ興味深いデータは、この温暖化現象の進行中、海水中の「酸素濃度が(急激に)減少した」という点だろう。気温の上昇傾向と酸素濃度の低下は反比例の関係にあることが、現在の環境において知られている。 この海水の温暖化に伴う酸素濃度の低下は、大絶滅の進行した約2億5200万年前の時期に起きたとこの論文は結論付けている。