火星で「太古の生物の痕跡」―今回のNASA発表はなぜ「世紀の大発見」なのか
Curiosity Roverからのデータ
NASA Curiosityの研究チームは、火星の大気におけるメタンガスは太古の生物 ── おそらく何十億年も前のもの ── によって放出されたものだと結論付けている。それはいくつかの状況証拠とともに、「Curiosity Rover」と呼ばれる1992年に火星に置かれた無人探査車からの最新データの分析結果に基づく。 火星には過去にかなりの量の水が存在したことが(ほぼ)事実として知られている。その表面には水が移動した“跡”(=太古の川や海の底)が多数見られる。「水があった」ということから、科学者は以前から血眼になって生物の痕跡、または生物そのものを探し続けてきた歴史がある。 そして今回のNASAの研究チームは、Curiosity Roverによって手に入れた二つの新たなタイプのデータを分析している。 まず火星の大気におけるメタンガスの放出は、季節的に夏頃(注:火星にも季節の変化がある)よりたくさん起きる。これは地中に埋蔵されているメタンハイドレートのような層から、定期的に漏れてくるものだろう。(こうした計測を行う装置が、Curiosity Roverにはあらかじめ備えつけられている。)そして大まかな埋蔵量や放出パターンからみると、「太古の生物から発生したメタンガス」という説明が、一番つじつまが合うようだ。 とりあえず私の知る限り他の可能性または仮説は、今のところ提出されていない。 そしてCuriosity Roverは、太古の湖があったと考えられる場所で、堆積岩の地層を採掘し、メタンガスの生成に直接関わった生物の有機化合物の化学成分 ── 特に有機炭素organic carbon ── の分析も行っている。有機化合物の中には生物に必須とされるタンパク質、脂質、核酸などの成分が含まれる。 かなり高濃度の有機化合物データが今回発見されたという。 Curiosity Roverの一連のデータにもとづく正式な研究成果は、学術雑誌SCIENCEに近日発表される予定だ。細かなデータ等はこちらにおいて確認できるはずだ。 ―SCIENCEのホームページ: