火星で「太古の生物の痕跡」―今回のNASA発表はなぜ「世紀の大発見」なのか
生物から放出されるメタンガス
日本語では沼気(しょうき)と表記される「メタンガス」(methane:CH4)。人工的に工場などで生産することができ、都市ガスなどの主要成分として、我々の生活にも身近な存在だ。 しかしどうして「メタンガスの存在」が生物と直接関わってくるのだろうか。 このメタンガスだが、実は自然界において生物から直接大量に発生する事実が広く知られている。特に海中にすむバクテリアはその大きなソースの一つだ。そして家畜や人などからも膨大な量のメタンガスが放出される(腸内の細菌がその源で、ガスがおならや糞などと共に体内から出てくる)。 こうして放出されたガスは、大陸沿いの海底などに地質年代を通して大埋蔵層(=メタンハイドレートmethane hydrate)として蓄積されることも確認されている。(注:メタンハイドレートの存在は1960年代にロシアにおいて初めて発見された。最近では海の底だけでなく地球の地殻(プレート)内にも存在することが知られている。) 一方、大気の一部として残り、蓄積されたメタンガスは、いわゆる「グリーンハウス・ガス」の一つとして、二酸化炭素などと共に「地球温暖化」の元凶とされる。二酸化炭素と比べるとその量自体は少ないものの(こちらのグラフ参照)、温室効果自体は20倍以上も高いとされる。そしてメタンガスは特に人口爆発に伴う家畜・畜産量の増加のため、その放出量がここ20~30年の間「急上昇」を続けている。(人類の食を満たすためメタンガスの放出量はコントロールできないのだろうか?) このメタンガスは、生物以外にも例えば火山の噴火や様々な化学反応によって生成されるケースがある。天王星や海王星にも0.1%弱くらいの割合で大気に存在すると推定されている。ちなみに土星の衛星の一つ「タイタン」には約2%とかなり高濃度のメタンが存在するそうだ。 それでは火星のメタンガスは「生物によって放出された」ものだろうか? それとも生物外がその起源だろうか?