世界経済の回復を見極める「2つの視点」とは?
新型コロナウイルスの世界的流行(パンデミック)で大きなダメージを受けた世界経済。経済活動が再開されていく中で、回復度合いをどう見極めればいいのか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストの解説です。 【グラフ】欧米経済、コロナ禍から復調気配 小売・娯楽施設への移動が増加
●中国の「貿易統計」
世界経済の回復軌道をチェックする上で重要な2つの視点をチェックします。一つは、中国の生産活動を捉える指標として中国の貿易統計、もう一つは米国の個人消費動向を読む上で重要な家計収入です。 12月7日に発表された中国貿易統計は、世界経済の回復継続を裏付ける結果でした。輸出(米ドルベース)は前年比+21.1%と大幅に伸び、輸入も+4.5%と強く、貿易総額(輸出+輸入)は+13.6%と2020年で最も高い伸び率となりました。輸出は6か月、輸入は3か月連続の前年比プラスです。米政府による輸出入規制の駆け込みもあってか対米貿易は輸出が+46.1%、輸入が+32.7%と大幅な伸びになりました。 また米国向け以外も好調でした。輸出は+16.3%、輸入は+2.8%と双方とも強く伸び、世界的に財貿易が増加していることが示されました。こうした貿易量の回復を受け、中国のコンテナ船輸出量は加速度的に増加し、2015年の中国ショック(中国株暴落)発生以降の最高点付近に到達しています。中国内における生産活動の先行指標として注目される銅の輸入量(数量ベース)は、前年比+16.9%と2桁の伸び率を維持しています。先行きの生産活動は底堅い推移が期待されます。世界経済を占う上で、中国の生産活動が上向いていることは朗報と言えます。
●米国の「家計収入」
他方、世界経済の先行き懸念材料といえば、米国の個人消費失速です。これまでのところ米政府の手厚いサポートによって個人消費は財消費(含む住宅)を中心に回復が明確化していますが、景気対策の遅れによって一部の失業給付措置が年末に期限切れを迎えることに留意が必要です。 現時点で失業手当を受給している人は2000万人近くいます。内訳は、通常の失業保険受給者(州が提供するもの、最長39週間)が555万人、フリーランスや自営業など、本来は通常の失業保険が適用されない人向けのプログラムであるPUAが887万人、通常の失業保険が失効した人向けに国が延長措置を提供するPEUCが457万人です(最長13週間)。