バブル最盛期並み 米国の住宅市場、コロナ禍で思わぬ活況
新型コロナウイルスが世界で再び感染拡大する中で、活気づく業界がアメリカにあります。どんな背景があるのでしょうか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストの解説です。 【グラフ】コロナ禍の世界経済 楽観と悲観を映し出す「銅」と「原油」
テレワーク浸透と住宅ローン金利低下
コロナ禍で思わぬ活況を呈しているのは米国の住宅市場です。報道ではニューヨーク中心地の閑散とした様子やアパート(日本でいうマンション)の空室増加が伝えられているため、ややもすると違和感があるかもしれませんが、ここ数か月の住宅関連指標は驚異的な改善を示しています。背景は、住宅ローン金利が歴史的低水準に低下したこと、テレワークの浸透に伴い、郊外戸建て住宅へと移り住む動きが加速していることです。 まず住宅金利については、フレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)によれば30年物固定金利は2.77%と史上最低となっています。2019年初の4.5%から、2020年初に3.7%へと緩やかに低下した後、2020年3月以降はFRB(米連邦準備制度理事会)の超大胆な金融緩和によって大幅に低下しました。これが住宅購入意欲の増加に寄与したことは間違いないでしょう。
大都市アパートから郊外戸建て住宅へ
そこに大都市アパートから郊外の戸建て住宅に移り住む動きが広がりました。テレワークの浸透によってニューヨーク、サンフランシスコなど家賃が著しく高い地域では、アパートを引き払う動きが特に加速しています。消費者物価統計で賃貸物件の家賃を確認すると、これまでの上昇軌道が崩れて下向きのカーブに転じています。こうした家賃の上昇一服が、アパート離れを浮き彫りしています。 それを横目に、鋭い上昇軌道を描いているのは中古住宅販売件数です。10月の販売件数(年換算値)は9月から4.3%増加して685万件となりました。前年比ではプラス26.6%と極めて大幅な伸びを記録し、水準は住宅バブル最盛期にあたる2005年に比肩しました。中古住宅販売件数は2016~19年の4年間の平均が約540万件でしたから、グラフの形状はかなり鋭角です。こうした下で中古住宅の在庫(販売可能戸数)は前年比で約20%減少し、販売価格(中央値)は前年比で約15%上昇しています。