新金融政策「平均2%」インフレ率 米FRBのメッセージとは
米連邦準備制度理事会(FRB)が発表した新しい金融政策の枠組みが注目されています。一時的な物価の上振れを容認するもので、インフレ目標に「平均」の概念を持ち込みました。これにはどんな狙いと注意点があるのでしょうか。第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。
失業率がコロナ禍前に戻るまでは低金利維持
米国の中央銀行FRBは新たな金融政策の枠組みを発表しました。オンラインで開催された会議でパウエル議長は「インフレ率は期間平均で2%を目指す」方針を掲げました。これはアベレージ・インフレ・ターゲットと呼ばれます。これまでのようにインフレ率の目標を2%とピンポイントで捉えるのではなく複数の循環、すなわちオーバー・ザ・サイクルでその平均が概ね2%程度となるよう幅を持たせる方針です。不景気でインフレ率が2%に届かない期間が続いた場合、その次の物価上昇局面でインフレ率が2%になっても、金融引き締めを実施せず、2%の上振れを容認する考え方です。 アベレージ・インフレ・ターゲットの採用は、FRBに課せられている責務である「雇用最大化」「物価安定」のうち、雇用最大化に重点を置く政策といえます。労働市場が十分に回復する前にインフレ率が上昇してしまうなどの不整合を事前に取り払うことで長期に及ぶ金融緩和を正当化する狙いがあると考えられます。雇用最大化については、一つのゴールとしてコロナ禍発生前の失業率4.5%が目安になるでしょう。失業率がコロナ禍前の状態に戻るまでは、物価が2%を超えて上振れたとしても、金融緩和を継続するというメッセージです。
近く発表の政策指針の想定される内容は
こうした枠組みに整合するよう、FRBは近い将来、フォワードガイダンスと呼ばれる政策指針を発表する見込みです。その内容は「平均的なインフレ率が安定的に2%を上回るまで、現在の低金利を維持する」、あるいは「失業率が〇%になるまで、現在の低金利を維持する」といった具合にインフレ率か失業率にリンクさせた文言、あるいはその両方に紐づける形になるでしょう。政策金利を引き上げないことを明文化することで、市場金利を低位に保つ狙いです。