もっと取りたい「体にいい炭水化物」、体重減少も 実は白米のご飯も冷ますだけで大変身!
血糖値の改善から糖尿病やがんリスクの低下まで、「難消化性でんぷん」に多くの利点
「難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)」とは、体重を管理したり、特定の病気を予防したりするのに役立つ炭水化物の一種だ。グリーンバナナや生のジャガイモ、オート麦、特定のナッツや種子、豆類などに含まれている。通常のでんぷんとは違って小腸では完全には消化されず、大腸まで届いて発酵することで、さまざまな面から健康を支える有益な細菌の食べ物となる。 ギャラリー:「病気を生む顔」になる食べ物とは 画像5点 健康効果を示す証拠は増えつつある。2024年2月に学術誌「Nature Metabolism」に掲載された研究では、肥満または過体重の成人が難消化性でんぷんを8週間摂取すると、腸内微生物叢(そう)を整え、全身性の炎症を軽くし、インスリン(血糖値を下げるホルモン)の効きやすさを改善し、脂肪の吸収を抑えることにより、体重の減少が促されたことが示されている。 また別の研究からは、難消化性でんぷんが血糖値コントロールの改善を助け、がんリスクのほか、さまざまな原因による早期死亡のリスクを下げることがわかっている。また、糖尿病性腎疾患の進行を抑える食事療法としても研究が進められている。 「炭水化物は悪者扱いされることが多いですが、難消化性でんぷんの存在は、炭水化物を上手に選んで摂取すべき理由のひとつです」と、米オーランド在住の登録栄養士タラ・コリングウッド氏は言う。 ところが、2020年に学術誌「Journal of Nutrition」に掲載された研究によると、米国の成人のほとんどが1日に摂取している難消化性でんぷんの量は4~5グラムであり、十分な量を摂取できていないという。 「難消化性でんぷんから健康効果を得るための適量は1日15グラムです」と、米テキサス・ウーマンズ大学の栄養・食品科学准教授で、同研究の共著者であるミンディ・A・パターソン氏は言う。
通常のでんぷんとの違いと健康にいい理由
実のところ、食物中のでんぷんはすべて炭水化物だ。「難消化性でんぷんとはその名の通り、消化されにくいでんぷんのことです」と、米サンディエゴを拠点に活動する栄養学者で公衆衛生コンサルタントのウェンディ・バジリアン氏は言う。 通常のでんぷんを摂取した場合、小腸の消化酵素がすぐにブドウ糖に分解し、それが血流に入って細胞に吸収される。「大半のでんぷんはエネルギーとして分解され、腸内細菌叢には影響を与えません」とコリングウッド氏は言う。 難消化性でんぷんが健康にいい理由は、分解されないまま胃や小腸を通過して大腸に到達し、そこで細菌によって発酵されることにある。これによって「プレバイオティクス」、つまりビフィズス菌などの有益な腸内細菌(プロバイオティクス)の餌として機能する。 その過程で作られる酪酸などの短鎖脂肪酸(SCFA)が、血糖の調整や、コレステロール値、免疫機能、その他さまざまな面で健康に良い影響を与えると、米メイン大学の食品科学・人間栄養学教授メアリー・エレン・カミリー氏は言う。 研究からは、短鎖脂肪酸がこうした効果をもたらすのは、有害な炎症を抑えたり、脂肪やその他の脂質の分解を促したり、血糖値を間接的に調整するホルモンの分泌を刺激したりするためであることがわかっている。 体重の管理に苦労している人たちにとってはさらなる利点がある。というのも、難消化性でんぷんのカロリー含有量(1グラムあたり2.5キロカロリー)は通常のでんぷん(同4キロカロリー)よりも低いため、難消化性でんぷんを豊富に含む食品を食べればカロリーの総摂取量が少なくなり、体重が減る可能性があるからだ。 またバジリアン氏によると、難消化性でんぷんは、太り過ぎの人で高まっているレプチンというホルモンの濃度を下げるため、満腹感を早めに感じられるようになり、1日の摂取カロリーを減らすのに役立つという。