箱根駅伝V2を狙う青学大が掲げた「絆大作戦」とは?
沿道応援自粛を要請して無観客で開催される箱根駅伝(来年1月2、3日)の出場21チームの登録メンバー16人が10日、発表され、恒例のイベント「監督トークバトル」がオンラインで開催された。2連覇を目指す青学大の原晋監督がぶちあげたのが「絆大作戦」。有力大学の監督が「大混戦」と予想する第97回大会制覇に向けた青学大の戦略とは?
勝負のポイントは「山(5区)」
新型コロナの影響を受けてオンラインでの開催となったトークバトルの画面に現れた青学大の原監督は、まず往路「優勝」、復路「優勝」、総合「優勝」と書かれたボードを提示した。そして続けて恒例の作戦を発表。そこには「絆大作戦」と書かれていた。 「これまではワクワク、サンキュー、ハッピーとか横文字が多かったのですが、今年は真面目にいきます。コロナ禍において国内だけでなく自粛を求められる分断社会となっています。新年度を迎えて、箱根を皮切りに(新型コロナの)感染が収束することを祈る思いもあります。大混戦となるので1区間ともブレーキは許されない。全員の絆をもって走り切る。それが総合Vへの近道となります」 原監督は「絆大作戦」の趣旨をこう説明した。 トークバトルのコーディネイトを務めた山梨学院大監督でもある関東学生陸上競技連盟、駅伝対策委員長の上田誠仁氏から「原さんは発言は大胆だが綿密なプランを立てる人。往路のどこでトップに立つのか?」と勝負のポイントを聞かれ「やっぱり山(5区)ですね」と即答した。 「4区までは、東海、駒沢、明治、早稲田、東洋、国学院大、東京国際、帝京と大混戦でいくでしょう。山決戦でバラけてきます。山では走力だけではなくメンタリティも重要です。抜かれるとエネルギーを吸い取られ、一人、二人抜くとパワーをもらって上がっていきます。走力だけでなくメンタルをポイントにおいています」
さらに上田委員長から、その“山の神”候補として竹石尚人(4年)、飯田貴之(3年)の名前が挙がったが、「それ以外にもいますよね」と明言はしなかった。 大混戦が予想されるだけに1区の人選も重要になってくるが、「これはゲームチェンジャーが何人いるかで展開が変わってきます。東京国際大のように2区に大砲(ビンセント)がいれば1区で多少遅れても挽回でき、3区のセカンドエースで上位にいけます。優勝を狙えないチームが目だとう精神でハイペースになる場合は、どうついていくのか。パズルの組み合わせが難しいですね」と、持論を展開した。 「絆大作戦」の中核を担うのは3人の4年生だという。 「4年生、特に神林、吉田、そして竹石尚人。この3人に私は絶大な信頼を持っているので、この3人が有終の美を飾ってくれると確信しています」 神林勇太は主将を務める。 ただ今回のエントリーメンバーには前大会の2区で日本人の1年生で史上最速タイム(1時間7分3秒)を出した岸本大紀(2年)の名前がなかった。股関節の怪我の影響のようだが、原監督が決断理由をこう説明した。 「ようやく走り出してポイント練習にも入っていますが、痛めた部位が部位(股関節)。箱根だけを目標にして欲しくない。2024年のパリ五輪、2028年のロス五輪で日の丸を背負って活躍する選手だけに中途半端に強化するよりも、しっかりと治して強化したいので将来を考えて決断しました。でも痛いのは痛い」 その岸本に代表されるように毎年1年生の強豪ランナーを抜擢するのが青学大の特徴でもあるのだが、今年は、佐藤一世一人だけとなった。その理由を原監督は、「1年が例年はもう少し入るのですが、(チーム内エントリーの)選考レースのひとつである10月の世田谷ハーフマラソンが中止となり1年が信頼を勝ち取るチャンスがなかった」からだという。 佐藤は八千代松蔭高時代の1万mの実績を買って選んだ。彼への期待は大きく「豊作!注目の1年生は?」という共通の質問に対して、他大学の監督からは、当然のように順大の三浦龍司、中大の吉居大和のスーパールーキーの名前が出たが、原監督は、あえて佐藤と東海大の石原翔太郎の名前を書いた。 「この世代には速い選手、強い選手がたくさんいます。吉居、三浦、駒大の優秀な1年の鈴木ら、みんな速いです。でも、そこに速さプラス、駅伝力を持っているのが、この2人。誰が一番強い1年かを証明するのが今回の箱根駅伝です」 岸本はいないが、新たなヒーロー誕生の予感があるのだろう。