なぜ32歳の新谷仁美はここまで強いのか…驚異的日本新で1万m五輪代表を決めた理由
陸上長距離種目の日本選手権が4日、大阪・ヤンマースタジアム長居で行われた。女子10000mは出走21人中12人、男子10000mは出走48人(OPの外国人選手は含まない)中25人が自己ベストを更新するなど好タイムが続出した。そのなかで“特大”のパーソナルベストを叩き出したのが新谷仁美(積水化学)だ。 序盤はチームメイトの佐藤早也伽(積水化学)が引っ張ると、2000m手前から新谷が前に出る。ほどなく5人いたトップ集団は一山麻緒(ワコール)とふたりだけになった。新谷は次の1000mを2分57秒とペースアップ。3000mを9分05秒で通過すると、東京五輪女子マラソン日本代表に内定している一山もついていけない。新谷の”独走劇”が始まった。 「無心でしたけど、皆さんの応援に応えたいという気持ちで走りました」とオーラ全開の新谷は5000mを15分07秒で通過した。6000m過ぎからは顔を歪めたが、ペースは落ちない。そして、ラスト1周を29分09秒で通過する。 新谷の自己ベストは”引退レース”となった13年のモスクワ世界選手権でマークした30分56秒70で、日本記録は02年に渋井陽子が樹立した30分48秒89。32歳になった新谷は30分20秒44でゴールに飛び込み、12年ロンドン五輪以来2大会ぶり2度目のオリンピック日本代表(内定)をゲットした。 日本記録を28秒も短縮する規格外の快走に会場は興奮と熱狂に包まれた。新谷の”魔法”は新型コロナ禍に沈む日本に勇気をもたらしたことだろう。 世界を見つめている新谷はめったなことでは笑顔を見せないが、今回ばかりは両手を上げて喜びを表現した。さらに2000m付近まで先頭を引いたチームメイトの佐藤と握手をかわした。 「応援が最後まで途切れることなく、気持ちよく、久しぶりに自分のなかで満足のいくレースができました。日本記録は皆さまのおかげです。ありがとうございました。佐藤早也伽ちゃんが2000mまでにリズムを作ってくれたので、その引っ張りを無駄にしたくない。今日は最初からリズムよく走ることができたので、一番に感謝を言いました」