吉沢亮“天陽ロス”から「青天を衝け」平成生まれ初の大河主演への道
吉沢亮主演のNHK大河ドラマ「青天を衝け」(日曜・午後8時)が好調という。14日にスタート、21日には第2話「栄一、踊る」が放送された。2024年から発行される新一万円札の顔としても注目される“日本資本主義の父”渋沢栄一(吉沢)が主人公で、幕末から明治へと時代に翻弄されながらも青天を衝つくかのように高い志を持って未来を切り開いた渋沢の生き様が多くの視聴者の心に刺さりそうだ。大河初出演にして主演を担う吉沢にとって飛躍の機会であると同時に大きな試金石となるだろう。吉沢亮とは、どんな役者なのか。
NHK朝ドラ「なつぞら」で記憶に新しい“天陽ロス”
21日放送の第2話では栄一役が幼少期の栄一(小林優仁)から後半は13歳になった栄一(吉沢)へとリレーし、いよいよ本格的に吉沢の登場となった。 吉沢は大河ドラマこそ初出演だが、かねてより正統派の美形ルックスと演技力の両面で着実に人気も上昇してきた俳優。満を持しての大河登場が主演というのも華がある。そのキャリアを振り返ると、2009年に行われた「アミューズ全国オーディション」をきっかけに芸能界入りし、「仮面ライダーフォーゼ」「ぶっせん」そして映画「銀魂」など、映像作品を中心に着々とキャリアを重ねてきたことがわかる。 2019年のNHK連続テレビ小説「なつぞら」ではオーディションを受けてキャスティングされ、ヒロイン・なつ(広瀬すず)の初恋の人で幼馴染の画家・山田天陽役を好演、天陽の出番がひと通り終わった後はネット上に寂しがるファンからの書き込みが続出し“天陽ロス”現象が起きた。とくに、麦わら帽子を投げて畑に倒れ込む芝居は朝ドラ史に残る美しい名場面ともいわれた。同年公開の映画「キングダム」では一人二役の演技が高い評価を受け、第62回ブルーリボン賞助演男優賞、第43回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞に輝いている。
最初から俳優を目指したわけではなかった
だが、最初から俳優を志していたわけではないという。約3年前のインタビューでは「高校受験が終わったころ、春休みになり勉強もしなくていい、やることもなかった時期に、母親がオーディションでも受けてみれば、と。賞金100万円が大きかったのかも(笑)。もしもらえたら何を買おうかな、なんて考えたりしながら受けたんです」と、デビューに至る経緯を説明。そのとき優勝はできなかったので賞金は逃したものの、3万人を超える応募者の中から特別賞に輝き芸能界入りした。しかしデビューしてもなお、「最初はずっとバイト感覚で、いつやめようかなと思いながらやっていたんです」と述懐する。「芝居で生きていきたいと思ったのは、たぶん19歳とか20歳のころ。大学に行く友達もいれば就職する友達もいたり、周りの環境が変わる中で、意識的に仕事というものと向き合って、自分の中で責任感が生まれたりしまして」。そして、気づいたら俳優の道をしっかりと歩んでいたという。 このときの取材を通して吉沢から受けた印象は「朴訥」、そして「誠実」。「もともと人とあまり話さないタイプなので、あまり現場で気を遣うことがなくて」と笑っていた吉沢だが、その通り取材中も言葉数は少なく、受け答えもじっくりと考えながら、ひとつひとつの言葉について誠意と責任を持って話す様子が記憶に残る。実際、「なつぞら」で共演した広瀬すずとはお互い人見知りのために、普通に会話できるようになるまで半年近くかかったという微笑ましいエピソードもある。
1994(平成6)年2月東京都の出身で、27歳になったばかり。大河ドラマの主演としては史上初めての平成生まれだ。産業らしい産業がまだなかった明治期の日本で、500を超える企業の設立に携わった渋沢栄一。同じ時代の財界人として、三菱財閥の創業者・岩崎弥太郎と並び称される存在だ。激動の時代を生きた渋沢という人物を、吉沢が役者としてどう生きるか。 吉沢のほかにも徳川慶喜を演じる草なぎ剛をはじめ、大河ならではの“超”がつく豪華キャストがそろう。今後の展開に期待したい。 (写真と文:志和浩司)