北川景子の葛藤 3年前やっと楽しくなった役者という仕事
「ここ3年ほど前から役者という仕事がようやく楽しくなってきたんです。それまでは苦しかったですね。お芝居、難しいですし」 北川景子は、ヒット作に恵まれ順風満帆に見えるキャリアを、そんなふうに振り返った。約3年ぶりの主演映画「ファーストラヴ」(堤幸彦監督)の公開を11日に控えた北川に、俳優としての現在地を聞いた。 【写真特集】変われる潔さある役者に 北川景子
上達せず苦しい道のり 30歳になってつかめたもの
「けっこう頭で考えてしまうタイプなので、やってもやっても上達しないし、ただキャリアだけ重ねてしまったという感覚がすごくあったんです。気づけば17年もこの世界にいますが、俳優という仕事やお芝居って何なんだろうって考えて、それがようやくつかめてきたかなって思えたのが3年ほど前、30歳になってから。なので、まだ始まったばかりと思っています」 “美人すぎる女優”などとメディアや世間から持て囃されながら、その裏で北川自身は常に葛藤していた。 「あれこれ考えすぎて感覚で動くことができず、楽しめていなかったんです。ありがたいことに主演やヒロインをする機会に恵まれ続けていたのですが、身の丈に合わない作品をやっているように感じてしまって苦しかった。自分より年下でデビューまもない子が、こんなに演技が上手いの?って打ちのめされることも度々ありました。でも30歳ぐらいで気付いたんです。自分のペースで長く続けられたらいいかな、って。不器用かもしれませんが、体が健康でいる限りはずっと役者を続けていきたい。舞台にも挑戦したいし、映画もご一緒したことがない監督がたくさんいて、お会いしたことがない俳優さんもたくさんいる。やりたい事がいっぱいあるって感じですね」
転機は2018年 大河ドラマで芝居に向き合う
30歳ぐらいから楽しくなってきたという、そのきっかけは何なのか。北川は、2018年を大きな転機にあげた。 「あの年は、すごく忙しかったんです。NHKで『フェイクニュース』という作品を撮ったり、大河ドラマ『西郷(せご)どん』に篤姫役で出演したり、映画『スマホを落としただけなのに』を撮ったのも2018年。いろいろな作品が立て込んでいて、考えすぎる暇もなかったんですね。自分で言うのもなんですが、若いとか可愛いとかきれいとか、そういうことで許されてきた面があったわけです。でも年齢を重ねてくると相応の実力が求められてきます。破れかぶれでもいいから、自分の殻を打ち破ってやらないとだめだなと」 具体的に何をどう考えたのか聞くと、「まずはお芝居を好きになることから始めないといけない、と思いました」ときわめて根本的な、仕事に対する向き合い方にまでさかのぼる。 「お芝居は難しいとか答えがないとか、自分には向いていないとも考えていました。でもそういうことではなくて、この仕事をしてお金をいただいて生活しているのだから、しっかり向き合わなきゃ、って。とくに『西郷どん』のときは渡辺謙さんはじめ多くの年上の先輩方とご一緒したのですが、皆さん紆余曲折を経て続けてこられたのだということがわかって、自分も大河ドラマのお仕事がいただけるようになったのだからもっと頑張らなきゃって、勇気をもらいました。それがすごく大きかった気がしますね。ちょっと自信になったのかな」