「靴下の重ね履き」に医学的な意味はない…「冷え症」に悩む人に産婦人科医が伝えている根拠のある3つの対策
■「自分が快適に感じる服装」を選べば問題ない では、どのくらい温かい服装をすればいいのだろうか。それは簡単。「自分が快適に感じる服装を選べば問題ありません」と宋さん。気温が低くても、さほど寒く感じられなかったら厚着しなくても問題ない。足が冷たいと感じないのに、普段より分厚い靴下をはく必要はない。これは普段でも妊娠中でも同じことだ。 「なぜか他人に『そんな服装だと体が冷えるよ』などと指摘する人がいますが、寒いかどうか、体が冷えているかどうかは、他人ではなく自分が一番よくわかるはずです。だから、そんなことを言われても適当に聞き流せばいいと思います」(宋さん) よく首、手首、足首を出していると温めたほうがいいと言われるが、これはどうしてか。「たぶん首や手首、足首には大きな血管が通っているので、冷えやすい部分だからですね。寒く感じるなら温めておくといいでしょう。でも寒くないのなら、やはりとくに温める必要はありません」(宋さん) また冷えるからといって、タイトな下着や服を何枚も重ね着したり、きついタイツを履いたりなどして体を締め付けると、血流が悪くなることで、むしろより寒さを感じやすくなることもあるという。なるべく締め付けのない服装がよさそうだ。 ■冷え性の改善には筋トレと温かい服、そして漢方薬が有用 一方、体が冷えて痛いほどになるという「冷え性」に悩まされている場合は、どうしたらいいのだろう。よく冷えの改善には運動がいいといわれるが、何をすると効果的なのか。 「腹筋運動や背筋運動、スクワットなどの筋トレをするといいと思います。あまりハードな運動ができないようならウォーキングなどの有酸素運動でも構いません。筋肉量が増えれば、体内で熱が発生しやすくなるためです」(宋さん) じつは自身も冷え性だという宋さん。どんな対策をしているかというと、とにかく冬は温かい服を着るようにしているそう。 「冬はダウンコートにムートンブーツ、ウールなどの温かい服を着ています。ウールは他の素材に比べて保温性と放湿性に優れているので、登山用品にも採用されているほど。寒さに弱い人は、一度、登山用の服を着てみるといいかもしれません」(宋さん) 近年は、さまざまなハイテク素材もどんどん開発されているので、変に重ね着をするよりも、そうした「あたたか素材」を試してみるのもいいかもしれない。さらに体が冷えてつらいようなら、病院で相談するのも手だ。 「私のクリニックでも行っているような漢方外来、または漢方薬を出している内科や婦人科などで相談するのもいいと思います。患者さんの症状や体質、担当する医師にもよりますが、一例として『当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)』や『当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)』などの漢方薬を処方することも可能です。ぜひ相談してみてくださいね」(宋さん) ---------- 宋 美玄(そん・みひょん) 産婦人科医、医学博士 大阪大学医学部卒業後、同大学産婦人科に入局。周産期医療を中心に産婦人科医療に携わる。2007年、川崎医科大学講師に就任。ロンドンに留学し胎児超音波を学ぶ。12年に第1子、15年に第2子を出産。2017年に丸の内の森レディースクリニック開院、一般社団法人ウィメンズリテラシー協会代表理事就任。『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』『産婦人科医宋美玄先生が娘に伝えたい 性の話』『医者が教える 女体大全』『産婦人科医が伝えたいコロナ時代の妊娠と出産』など著書多数。 ----------
産婦人科医、医学博士 宋 美玄 聞き手・構成=大西まお