頭がよくても面接で落とされる人の特徴…医学部受験面接の返答「小児科医になりたい」は即刻△がつくワケ
医学部受験では高い理系的リテラシーが必須だが、面接を軽視すると不合格の憂き目にあう。医学部専門予備校「D組」の校舎長・七沢英文さんは「診察時の患者とのコミュニケーション能力や相手に寄り添う気持ち、看護師などとチームを組むうえでの協調性も重要です。そのため、面接を重視する医学部が増えている」という――。 【図表をみる】医師の両輪は「科学」と「アート」 ※本稿は、『医学部進学大百科2025完全保存版』(プレジデントムック)の一部を再編集したものです。 ■一緒に働く仲間としてふさわしいかどうか 「『サイエンス』と『人間力』。医師になるための最大の必要条件はこの二つです。105歳で亡くなられた医師の日野原重明さんの言葉を借りれば、『医はサイエンスに支えられたアート(人間力)』。高名な医師の先生方はみな、この言葉に似た高い意識を持って後輩を育てています」 そう語るのは東京の医学部専門予備校「D組」の校舎長・七沢英文さん。 国公立大、私立大の医学部の多くが受験科目に「面接」を課すのは、後者の「人間力」をチェックするためだ。 「数学や理科といったサイエンスの基礎知識は、国公立大なら大学入学共通テストや2次試験で、私立大なら1次試験などでそのレベルが測れます。医師には高い理系的リテラシーが必須ですが、それだけでは務まりません。患者を診察する際のコミュニケーション能力や相手をおもんぱかる想像力、他者に寄り添う気持ちといった側面も大事です。看護師などとチームを組むうえでの協調性も求められます。いくら学科の成績が優秀でも、これらが欠けていれば医師という職業人としては失格です。だから、各大学は面接を重視しているのです」(七沢さん、以下同)
■理数各100点、面接が200点…学科の点数がよくても落ちる しかも、面接は合否の決定打となるケースも多いという。鍵となるのは、配点だ。大学によっては、面接結果を点数化しないこともあるが、英・数・理など主要科目と同等以上か、さほど低くない配点にしている大学も少なくない。 例えば、国立大。秋田大の2次試験は英・数が各100点、面接が200点。面接は総得点の50%を占める。 私立大では、金沢医科大学(前期)の配点は、英・数各100点、理科2科目計150点、面接110点、小論文60点。面接が約20%を占めている。 「学科の問題が難解で平均点があまり高くない場合は大きなチャンスとなります。なぜなら、面接は面接官の心象によっては満点もありえるからです。合否の決定をする総合点で大逆転も可能になります。私が過去に指導した受験生の中でも、私立の1次の得点が低かった子が2次の面接で高評価を得て合格するケースは少なくありません」 では面接でどう答えればいいのか。 どの大学の2次試験でもほぼ必ず質問されるのが、これだ。 「なぜ医師になりたいのですか?」 これに対して、「以前、家族や親戚が病気やケガで命を落としたことがきっかけです」と回答したとしよう。評価はどうか。身内の悲しい出来事を踏まえたもので、決して悪くはない。だが、動機付けとしてやや浅い印象は否めない。なぜなら面接現場で、実際にこの回答をする受験者は珍しくなく、インパクトに欠けるからだ。 「なぜ、医学部は毎年この見え見えの質問をするのかといえば、どれだけ医学に関して真面目に考えたのかが顕著に表れるから。とってつけたようなありきたりな回答だと、面接官は『この人は、ただ医師というステータスがほしいだけ、お金を稼ぎたいだけなのではないか』といった疑念を抱いてしまうかもしれません。 そもそも医師の仕事は、患者の命を預かったり、夜勤で長時間勤務があったり、と過酷です。そうしたつらい状況になったときに、しっかりした動機がない人は苦しさに耐えられませんし、踏ん張りもききません。でも、病める人を癒やすという行為にその人なりの価値を見いだし、患者の命を救ってその人の人生に貢献したいという志や奉仕の気持ちがある人ならやり抜ける。それまでの人生で経験した具体的なエピソードを挿入しながら、そういう回答ができたら評価も高いでしょう」