「靴下の重ね履き」に医学的な意味はない…「冷え症」に悩む人に産婦人科医が伝えている根拠のある3つの対策
■人間は恒温動物、恒温動物の内臓は冷えない こうして体が冷えると、寒かったり痛かったりして不快なだけでなく、なんとなく健康状態にまで不安を感じがちになる。それは昔から「冷えは万病のもと」「子宮が冷えると不妊症や婦人科系の病気になりやすい」「妊婦さんが冷えると難産になる」などといわれているから。けれども、こうした説にも根拠はない。 「おなかが痛くなったり、体調が悪くなったりするほど体を冷やすのは当然よくありませんが、ただちに健康上の重大な問題が生じることはないでしょう。それに冷えというのは中医学の考え方ですが、その教科書には冷えると不妊や難産、婦人科系の病気になるとは書かれていません」(宋さん) しかも、たとえ手足の先が冷えていても、先に述べたように私たち人間は恒温動物なので、体の中にある内臓が冷えるということは考えにくい。とくに子宮は、体内の深い位置にあるため、冷えることはないという。では、月経痛がひどいときに温めるというのは効果があるのだろうか。 「月経痛がひどいときにお風呂に入ったり、カイロを貼ったり、腹巻きなどを使って温めたりすると痛みを感じにくくなり、緩和されたと感じることは多いでしょう。これは肩こりや腰痛、筋肉痛などでも同じだと思います」(宋さん) ■「冷えを解消しなければ健康になれない」という「呪い」 それでも人に「冷えている」「病気になりやすくなる」などと指摘されると、不安に感じる人も少なくないはずだ。実際、婦人科の診察室には、冬はもちろん、夏でさえ厚着をした妊婦さんがたくさん訪れるという。 「体を温めすぎている妊婦さんは本当に多いですね。下着を何枚も重ねて、腹巻きをして、カイロをたくさん貼って、タイツを履いて……それでご本人が快適ならいいのですが、暑くてのぼせるほど温めるのはよくありません。大体、妊娠中はむしろ血流量が増えるので冷えにくいはずです。冬はまだしも、夏は特に熱中症が心配になります」(宋さん) 産婦人科医である宋さんでさえ、自身の妊娠中に足首を出していたら「陣痛が弱くなるよ」と助産師さんに言われた経験があるという。妊婦さんに「体を温めるように」と伝える人がいかに多いかがよくわかるエピソードだ。 「冷えって、呪いのようなところがありますよね。冷えを解消しないと健康になれない、きれいになれない、太りやすくなる……などと脅すことで何らかの商品やサービスを買わせようとする企業さえあります。だから話半分に聞いたほうがいいでしょう」と宋さん。