F1レッドブル・ホンダが30年ぶりに4連勝した理由
それが今年はメルセデスが6戦目に2基目を投入してきたのに対して、ホンダは7戦目に2基目を投入してきた。これはホンダのパワーユニットの信頼性がこれまでにない向上を遂げているだけでなく、その信頼性を崩さないよう現場で的確な対応を行っているからでもある。 1基目を6戦で問題なく使用したホンダは、1基目のデータを元に2基目に関しては、もう少しチャレンジングな使い方を採用しているのではないか。それがハミルトンが「ストレートでは追いつけないほど速かった」と感じた要因ではないだろうか。 シュタイアーマルクGPが行われたレッドブルリンクは、2年前にホンダが復帰後、初優勝した思い出の地だ。今回の優勝でホンダはレッドブルと組んで、わずか2年で通算10勝を挙げた。ホンダF1の現場監督である田辺豊治F1テクニカルディレクターは、この2年間のホンダの向上に関して、次のように振り返った。 「ホンダはパワーユニットを供給してますので、まずはパワーユニットが進化しました。これはICEの出力だけでなく、ERS(回生エネルギーによる電気)の出力も同様です。またレギュレーションの規定内でシーズンを戦うには、それ相応の信頼性を確保しなければいけません。そして、そのパワーユニットの使い方という面でも向上してきました。常に新しいトライをし、パフォーマンスを向上したり、それに合わせてレースでのマネジメントも工夫してきました。したがって、HRD Sakura(日本)とHRD UK(イギリス)のメンバー、そしてわれわれ現場のメンバー、みんなの質の向上があったと思います」 シュタイアーマルクGPのレース後、敗軍の将であるメルセデスのトト・ウォルフ代表は、ホンダの山本雅史(マネージングディレクター)を訪れ、こう語った。 「優勝おめでとう。あなたたちは今日、素晴らしいレースをした。これからはホンダがわれわれのベンチマーク(目標)だ」 F1にパワーユニットが導入されて以降、王者に君臨してきたメルセデスが、同一チームに4連敗を喫したのは2014年以降、初めて。いま時代はゆっくりと変わろうとしている。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)