「大人の発達障害」が増えている理由、そして治療方法は?【40代50代・「大人の発達障害」を理解する①】
治療の主軸は心理教育
では、発達障害かも? と思ったらどうしたらいいのだろうか? 「まずは発達障害に関する本を2~3冊読んでみてください。そうすると自分はどのタイプに当てはまるのか? 何に気をつければいいのか? が、なんとなくわかってきます。その対処方法を実践してみるといいでしょう。 本ではよくわからない場合には、精神科か心療内科を受診してみてください。施設によっては、メンタルクリニックやこころのクリニックといった名称を使っているところもあります。全国の発達障害者支援センターに相談する方法もあります。 クリニックを受診する人は、生活に支障が出るほどの生きづらさを感じて、本人自らの意思で来院するケース、もしくは家族に促されて来る場合もあります。中には、子どもの発達障害を心配して一緒に来院したところ、自分の発達障害がわかることもあります。 診察では、それぞれの診断基準に即した問診が行われます。まず問診表への記入が促されると思います。その内容は、現在の状態や問題についてだけでなく、赤ちゃんから幼少期、小学生や中学生の頃どのような子どもだったのかについても触れていきます。 いくつかの検査を行うことで、自分にどのような傾向があり、何が問題なのかがわかってきます。そのうえで医師と話し合いながら、その困った問題を解決する方法、対人関係の見直しなどをするカウンセリングなどの心理教育を実践していきます。 場合によっては、ADHDには多動性や衝動性を押さえる薬、ほかに症状に応じて抗うつ薬や抗不安薬などを処方することもありますが、まずは環境調整や心理療法から始めるのがよいでしょう。 自分が発達障害であり、今までうまくいかなかったことは障害のためだと知ることで、安堵して前向きに対処する気持ちになる人も少なくありません。 発達障害は生まれつきの『脳の癖』のようなものです。その癖を理解して上手に付き合って、生活での困り事を少しでも減らしていくことが大切なのです」
【教えてくれたのは】 司馬理英子さん 医学博士。司馬クリニック院長。岡山大学医学部・同大学院卒業後、1983年渡米。アメリカで4人の子どもを育てながら、ADHDについて研鑽を深め、1997年に帰国後、東京都武蔵野市に発達障害専門のクリニック「司馬クリニック」を開院。著書は『のび太・ジャイアン症候群』(主婦の友社)をはじめ、「わたし、ADHDガール。恋と仕事で困ってます」(東洋館出版社)、近著『もしかして発達障害?「うまくいかない」がラクになる』(主婦の友社)など、多数。 イラスト/小迎裕美子 取材・原文/山村浩子