【40代・50代におすすめ温泉】東鳴子温泉「旅館大沼」の湯守・大沼伸治さんに聞く「現代湯治」のススメ
前回、宮城県・東鳴子温泉「旅館大沼」に宿泊した温泉マニアのライター・ミワ&ミホ。その宿で五代目湯守を務める大沼伸治さんが提唱しているのが「現代湯治」だ。ストレスフルな現代人にこそすすめたいという「現代湯治」とは、どんなものなのだろううか? そして「湯治」の真髄とは?ミワ&ミホが話を伺った。
「湯治」とは、余計なことを何もせずただひたすら温泉に入ること
ミホ 今回「旅館大沼」で湯治をして、私たち、ますます温泉愛が深まったわよね~。 ミワ 本当に! 「旅館大沼」だけで8つもお風呂があるし、鳴子温泉の湯巡りもしたし、こんなに温泉三昧をしたのは初めてかも。 ミホ 「旅館大沼」の湯守である大沼さんは、「現代湯治」を提唱されていますよね。今日は、大沼さんの考える「現代湯治」や、「湯治」の真髄について、ぜひお話を伺えればと。 大沼さん(以下、敬称略) まず、知っていただきたいのが、「湯治」は観光旅行とは違うということです。多くの人は「温泉に行く」というと、どこで何を食べて、どこの観光地に行って…と、あれこれ予定を詰め込みますよね。でも「湯治」は、余計なことは何もせず、ひたすら温泉に入ってボ~ッとして自分を整えることなんです。 ミホ 確かに、温泉旅行に行くと、あれもしなきゃ、これもしなきゃって欲張りになって、ついせわしなく過ごしてしまっていたかも…。 ミワ せっかくその土地に来たんだから、できることをすべてやって帰ろうと思ってしまうわよね~。でも今回、2泊3日の湯治をしてみて、初めてゆっくり過ごすことのよさがわかった気がします。
大沼 最近、「タイパ」という言葉が流行っていますが、現代人はその時間内にいかに効率よくいろいろなことをするかばかりを考えて、「何もしないこと」は「もったいないこと」と捉えがちですよね。だから、休むつもりで旅行に出たのに、結局忙しく過ごしてしまい、疲れて家に帰って、「やっぱり我が家がいちばん」となってしまうんです。 ミホ そのセリフ、日本人の旅行の締めの定番ですね(笑) 大沼 でもそれでは、いつまでたっても疲れが取れません。特に現代人は、ストレスフルでメンタルの疲れを抱えている人がたくさんいます。そんな人こそ、ただひたすら温泉に入るだけの湯治をしていただきたい。湯治ほど「タイパ」が悪いものはないんですが、その何もしない時間こそが、実は最も尊くて最高の贅沢です。ただ温泉に入って、自然の中に身を委ねて、川のせせらぎや滝の音、鳥の囀りに耳を澄ましたり、木々や空を眺めたり。その何もしない時間に、温泉の効果で、実は心身にとんでもなくいろいろなことが起きているんです。 ミワ 確かに何もしないことって大事ですね。温泉に入る以外のことをあれこれしていると、血流もそっちに取られちゃったりして、温泉の効果が半減しちゃいますよね。 ミホ 現代人は、スマホ中毒の人も多いけれど、温泉に入っているときはスマホも手放さないといけない。だから自ずと、自然や自分に向き合うことになりますよね。