【40代・50代におすすめ温泉】東鳴子温泉「旅館大沼」の湯守・大沼伸治さんに聞く「現代湯治」のススメ
湯治は、その土地ならではの地球の循環水に身を委ねて、自分を取り戻す時間
ミワ 今回の湯治で、温泉の泉質そのものを堪能する楽しさも改めて感じたわよね、ミホさん。 ミホ そうそう。温泉施設というと、建物や内装や食事に凝ったりとか、温泉以外の付加価値をつけている宿が多いけれど、今回ここで湯治をして、やはり温泉宿で大事なのはお湯そのものだなと感じたわよね。 大沼 まさに大事なのはそこなんです。この前、とある地方の森へリトリートに行ったとき、森自体はとてもよい環境だったんですが、近くの温泉施設の温泉が、塩素の匂いが強くてちょっと残念でした。せっかく来たのに、温泉でなく薬品に浸かっているようなものだなと思って…。あがり湯に、水道水のシャワーで体を流したときに逆にホッとしたという(笑)。これでは温泉本来の良さが失われているなと思いました。 ミワ 確かに、こういうご時世だからしょうがないとはいえ、最近、塩素消毒している温泉、多いですもんね。 大沼 設備や食事やサービスにこだわることももちろん大切ですが、そのせいで温泉が脇役になっていることも多いようで。温泉自体がダメだったら本末転倒です。昔は、温泉に立派な建物などなくて、人々が日頃の疲れを癒すため、シンプルに温泉そのものの力を求めて入っていたんです。最近は、そんな昔ながらの温泉文化が失われているなという危機感があります。 ミホ 塩素が入った温泉にしか入ったことがないと、本物の温泉との違いってわからないかもしれないですね。1度でも本物の温泉に入ると、お湯の質感も体や心への効果も全然違うことを体感できるんですけどね~。 大沼 やはり、温泉に行くからには、本物の温泉に入っていただきたい。温泉は、その土地でしか湧かないオリジナルの地球の循環水です。土地が違えばお湯も違って、ひとつとして同じものはありません。そのお湯を、薬品などを加えずにそのまま提供することが、湯守である私たちの使命で、それこそが価値あることだと思っているんです。自然の一部である人間が温泉に浸かることで、自然とひとつになって、自分を取り戻す。そんな日本が世界に誇る温泉文化を、見直さないともったいない。 ミワ 本当にそうですね。私は温泉は、毛穴から飲む栄養ドリンクだと思ってるんです。 大沼 そうですよね、地球が生み出した天然の美容液とも言えます。しかも地球が生み出す熱で自分を温めるんですから、湯治ってすごいことなんです。現代にはいろいろな健康法がありますが、温泉は何の教義やメソッドもなく、服を脱いでただ浸かるだけ。それで健康になれるなんて、こんなにお得なことはありません。温泉に浸かっているときは、何も考えず「無」になれる、まさに「マインドフルネス」な時間。お湯を信頼して、自分を預けて、お湯と対話していただきたいですね。