子どもが性の悩みを気軽に相談できる関係性をつくるには―家庭での性教育で心がけたい三つのポイント #性のギモン
日常のコミュニケーションの延長線上に性的な関係性がある
――染矢さんは保護者向けだけでなく、学生を対象にした講演もされているそうですね。 染矢明日香: 中高生や大学生に向けて講演するときは科学的に正確な性の知識を伝えたり、ワークショップなどをしたりしています。具体的には、性的同意を取りやすくする工夫としてどんな声かけができるかとか、コンドームをつけないパートナーがいたらどう対応をするかなど。最近はデートDVについても扱っていて、パートナーからの一方的で乱暴なやり取りとお互いを尊重しているやり取りではどんな違いがあるのかを、ボランティアの子たちに実演してもらいながら考えたりもしています。 どの場面においても、やはり「関係性」がすごく重要です。相手と良い関係を築くためにも自分の権利を知り、自分の意見を伝えるスキルを身につけることは非常に大切。参加者が自分事として考えられるような講座をしています。 ――学生からはどんな反応があるのでしょうか。 染矢明日香: 性的同意を得ることに関しては「ムードがない」とか「性的なことを切り出すのが恥ずかしい」といった反応があります。ただ、「こうしないといけない」ということではなく、「相手を傷つけずに、お互いが安心できるための工夫としてこういったやり方もあるよね」と選択肢の一つとして提示することを大切にしています。 普段の関係性の中でも、例えばレストランでどんなメニューを注文するかというところからお互いの同意を大切にすることはできるんです。しかし、普段から同意が得られていないような関係性だと、いきなり性的同意というのはものすごくハードルがあると思います。性的なものとそうでないものはどうしても切り分けて話されがちですが、日常のコミュニケーションの延長線上に性的な関係性があるとも考えられます。一方的などちらかが言いなりになっているような関係性ではなく、お互いに意見を言い合える関係性が「同意を取れる関係性」ということだと思っています。 意見を確認し合う中で、必ずしも同意に至ることばかりではないと思いますが、それはあなた自身を全否定しているわけではないということも知っておいてほしいですね。「同意を得られる関係性」ということは「拒否も起こりうる」ということなので、拒否をされたときに、自分の心とどう向き合い、行動していくかということも日頃から考えておくことは重要だと思います。 ----- 染矢明日香 石川県金沢市出身。NPO法人ピルコン理事長。自身の経験から日本の思いがけない妊娠・中絶の多さに問題意識を持ち、大学在学中より学生団体ピルコンを立ち上げ、性の健康の啓発活動を始める。その後民間企業でのマーケティング職を経て、2013年に同法人を設立。これまで中学校、高校、大学などで300回以上、4万人以上を対象に性教育講演を実施。著書に『マンガでわかるオトコの子の「性」』(合同出版)、監修書に『10代の不安・悩みにこたえる「性」の本』(学研プラス)がある。 文:清永優花子 (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました) 「#性のギモン」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の1つです。人間関係やからだの悩みなど、さまざまな視点から「性」について、そして性教育について取り上げます。子どもから大人まで関わる性のこと、一緒に考えてみませんか。