7月に長期国債買い入れ減額へ計画決定…でも日銀に利上げを先送りするハードルは高い?
6月に開かれた日銀の金融政策決定会合では、長期国債の買い入れを減額する方針を決めました。次回7月会合で具体的な計画を決定します。ただ7月には利上げの観測もあります。それらは同時に決定されるか。第一生命経済研究所・藤代宏一主席エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】急激に進む円安は止められない? 今さら聞けない為替のキホン【Q&A】
植田総裁、長期国債の買い入れ減額は「相応の規模」
6月14日の金融政策決定会合では大方の予想通り政策金利が据え置かれた一方、長期国債の買い入れ減額方針が決定されました。買い入れ減額は即時ではなく、7月30~31日の金融政策決定まで現在の6兆円程度の買い入れ額を維持した後、7月の金融政策決定会合において、今後1~2年程度の減額計画を固めるというものでした。同時にその具体案を固める機会として「債券市場参加者会合」の開催を発表しました。会合の参加者は銀行等グループ、証券等グループ、バイサイドグループで構成され、そこで実務面での意見交換がなされると思われます。 金融政策決定会合後の植田総裁の記者会見では、長期国債の買い入れ減額の具体的案について、核心的な示唆は得られませんでした。総裁は減額方針について「国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切」と慎重な姿勢を示しつつも、その規模については「ほんのわずかしか減額しないということはではなく、相応の規模」になると表現しました。市場参加者が意識していた月間購入額の数値として「5兆円」がありますので、総裁はそれを念頭に置いて「相応」という言葉を選んだのかもしれません。そうであれば、日銀がそれ以上の規模の減額を画策している可能性もあり、これは長期金利の上昇圧力として認識されます。もっとも、総裁は「国債残高の大まかに5割を日本銀行が保有している状態ですので、長期的に望ましい状態にまで1、2年程度で到達できるとは思っておりません」とも発言しており、バランスシート縮小をゆっくりと進めていくことを示しました。 「長期国債の買い入れ減額は量的引き締めと理解して良いか」という記者からの質問に対して、総裁はその主目的はあくまで「金利の自由化」であるとしました。その上で「予見可能な形で金融政策的な色彩は極めて最小化した上で運営していきたい」と発言。3月のマイナス金利解除以降、短期金利(の操作)を金融政策の主たる手段として用いることを表明している植田総裁は、長期国債の買い入れ減額に伴う、金融引き締め効果を最小限に留めたいと考えているのではないでしょうか。