日経平均が史上最高値更新 日本でも欧米並みの賃金インフレが起こる?
日経平均株価は22日、史上最高値を更新し、3万9000円台まで上昇しました。株高が続く米国では労働力不足に伴う賃金インフレが生じましたが、日本でもこのような事態は起こり得るのでしょうか。第一生命経済研究所・藤代宏一主席エコノミストに寄稿してもらいました。
米国では「億り人」が続々と誕生、高インフレに
米国ではコロナ期において55歳以上の労働参加率(15歳以上人口に占める働く意思のある人の割合)が顕著に低下しました。それによって人手不足感が強まり、労働市場では求職者の争奪戦が繰り広げられ、賃金が大幅に上昇しました。その労働コスト増加が価格に転嫁され、高インフレに見舞われた形です。 そもそもなぜ55歳以上の労働参加率は低下したのでしょうか。それはコロナの直接的影響(死亡、後遺症)に加え、資産価格上昇を後ろ盾とする早期リタイアがありました。ケース・シラー住宅価格でみた不動産価格はコロナ期前(2020年1月)と比較して直近では40%以上高く、株価もS&P500種指数は2020年1月の3300近くから直近では5000を超えています。日本で言うところの「億り人」が続々と誕生し、そうした人々が労働市場から退出していったことでインフレが発生し、低所得者が割を食う皮肉な構図となりました。
高齢者の労働参加率が低下すれば人手不足は深刻に
日経平均株価がほぼ最高値に到達した現状、日本でもこのような事態が起きるのでしょうか。そこで資金循環統計で家計の金融資産残高を確認してみると、2022年7~9月期から2023年7~9月期にかけて約100兆円の増加が認められており、その内の約8割(株式・投資信託が79兆円増加、年金・保険が2兆円増加)が株価上昇で説明可能でした。この増加傾向は現在進行形でかなり強まっていると思われます。60~65歳を過ぎても就労を継続している人々の大きな動機として老後の経済的不安があると推察されます。仮にそれが金融資産の増加によって解消・緩和されるなら、リタイアや労働時間の削減といった選択肢が浮上してくるのは自然でしょう。