日本のシングルマザーの貧困 豪州出身の監督が見た「豊かな日本で取り残された人々」
今秋、公開されたドキュメンタリー映画「The Ones Left Behind 取り残された人々:日本におけるシングルマザーの苦境」が反響を呼んでいます。国内での追加上映が決まり、イギリスでの上映も予定されています。先進国の日本で、なぜシングルマザーたちは苦しい立場に置かれているのか、日本社会が抱える課題とは何か、日本に20年以上暮らし、今回が初監督作品となるオーストラリア出身のライオーン・マカヴォイさん(43)に聞きました。(聞き手・構成=渡辺志帆) 【フォトギャラ】作品に登場するシングルマザーたち
【ライオーン・マカヴォイ Rionne McAvoy】映像作家、プロレスラー。1981年オーストラリア出身。合気道家の父の影響で幼少期からテコンドーや空手を始める。9歳ころから映像制作に興味を持つ。大学時代に交換留学で来日し、プロレスに魅了される。2013年、30歳でプロレスラーとしてデビュー。リングネーム「藤原ライオン」として活動する傍ら、2015年に映像制作会社「ジャパンメディアサービス」を設立し、映像制作を本格的に始める。
――このドキュメンタリー映画を作るきっかけを教えてください。 プロレスラーになってから10年間、何も撮っていなくて、どうしてもまた何か撮りたいと思って自分の映像制作会社を立ち上げたのが2015年。バイリンガル(英語と日本語の2カ国語)の映像が作れることを売りにSDGs関係や、地方自治体の海外向けのインバウンド誘致の仕事などをたくさん受けてきました。 コロナ禍の2020年、英BBCから来日できないクルーの代わりに撮影する仕事を請け負う中で、ドキュメンタリーの撮り方や編集の仕方を教えてもらいました。その頃から自分も、有名人を撮るよりも社会課題を撮って、社会の役に立ちたいと思うようになりました。 自分の心に残る、そして誰も手がけたことのない、社会のムーブメントを生み出すようなドキュメンタリーのテーマはないか……プロデューサーでもある妻(及川あゆ里氏)と半年くらい探していたとき、妻の友人のシングルマザーの話を聞いて「これが自分のミッション(使命)だ」と思いました。 ――どんな話だったんですか。 女性は夫の浮気が原因で離婚したのですが、元夫が家のお金をすべて持って行ってしまい、さらに子どもが大病にかかったのに、女性はアルバイトしかできず、治療費が払えなくて困っているという話でした。 女性から相談を受けて、なぜ国や行政に助けを求めないのか、なぜ元夫に養育費の支払いを頼まないのか、なぜ闘わないのかと言いましたが、「大丈夫。しょうがない」と言うばかりなんです。おかしいな、この変なプライドは何なんだろうと思いました。