なぜ渋野日向子はQシリーズで20位に食い込み米ツアー出場権を獲得できたのか…逆境での勝負魂「最後まで攻めるゴルフ」
3番(パー4)のダブルボギーは、3パットのボギーを打った2番(パー4)を引きずるようにティーショットを左の池に入れた。2打目をグリーン手前の下のラフに落とし、アプローチもミスした最終18番(パー4)のダブルボギーも、その前の17番(パー3)がボギーだった。以前から「イラっとするのがダメなところ。大人にならないと」と何度も話していたが、ミスを取り戻そうとして、深みにはまるのが崩れるときの渋野のパターン。第7Rを終えたあとは取材には一切応じず、今にも泣きだしそうだった。 ただ、スコアも気持ちも底を打てば劇的にV字回復する。これも渋野のパターンの一つだ。 最終日の第8Rは5バーディー、2ボギーの69。 「自分で自分を追い詰めていた。すべてをさらけ出した日もあったけど、昨日より10打も良くなった。最後まで攻めるゴルフができたらいいな、と思いながらやっていた」 前半戦の第3Rと同じように逆境に追い込まれると、余計なことを考える余裕もない。開き直り無の境地に達したときに、渋野には、生まれ持った本能とも言える勝負魂が湧き上がってくるのだ。 プロレベルになれば、スコアメークに一番必要なのは、技術ではなくメンタルとも言われるが、渋野のゴルフは、まさに、その言葉が真理だと証明する。 2019年の「AIG全英女子オープン」の優勝で得た米ツアーのメンバー入りの権利を、当時は行使しなかった。遠回りしてつかんだメンバーカード。20位以内に入るとより多くの試合に出場できるが、すべての試合に出場できるわけではない。
国内女子ツアーは最終予選会(ファイナルQT)で30位前後に入れば、翌年の前半戦の試合にほぼフル出場できるが、米ツアーのQシリーズの位置付けは、さほど高くないのだ。 出場有資格者のカテゴリーには、前年の賞金ランキング上位80人(2022年からポイントレース上位80人に変更)、生涯獲得賞金上位20人、過去2年間のツアー優勝者、前年の下部ツアー賞金ランキング上位10人などがあり、Qシリーズ枠は上から14番目。米ツアーは1試合で120~140人が出場するが、2019年シーズンの場合でQシリーズのトップ通過者の出場優先順位は129番目にすぎない。渋野は「全英」優勝の資格で、来年もメジャー5試合の出場権は有しているが、Qシリーズの枠では出られない試合の方が多くなる可能性もある。 さらに、4月に予定される第1回リシャッフルまでに結果を残さなければ、それ以降の出場は保証されない。 「どれだけ出られるか分からないけど、出る試合は勝ちにいきたい。シードを目標にできたらいいかな」 厳しい戦いが待っているのは覚悟の上の米ツアー挑戦。だが、ジェットコースターのようなQシリーズで最終的に見せつけた勝負魂が、大きな結果をつかみとるような予感もする。 「とりあえず、ひと安心です」 ハラハラドキドキだった8日間を戦い抜いた渋野は、今、新たなスタート地点に立ったのである。