Qシリーズ24位で後半戦に向かう渋野日向子は米ツアー出場権を得ることができるのか…前半戦から見えた可能性と懸念材料
女子ゴルフの渋野日向子(23、サントリー)が来季の米ツアー出場資格を争う最終予選会(Qシリーズ)の第一関門をクリアした。Qシリーズは8日間144ホールの長丁場で、渋野は今月2日から4日間、米アラバマ州モービルの2コース(クロッシングズ、フォールズ)で行われた前半の72ホールを首位と13打差の通算6アンダーの24位で通過した。 初日は81位と大きく出遅れ、2日目の段階でも72位で“圏外”だったが、3日目にクロッシングズコースで7バーディー、1ボギーの66をマークし、通算4アンダーで一気に25位まで順位を上げた。 4日目も、フォールズコースを5バーディー、1ボギー、1ダブルボギーの69で回り、通算6アンダーの280で順位をひとつあげて24位とし、70位タイまでが進める9日からの後半4日間(ハイランドオークスGC)への進出を決めた。 「ハラハラドキドキの4日間だった。第3ラウンドを6アンダーで回れたことで、気持ちを切り替えられた。来週につながるいいゴルフができたと思う」と安堵の笑みを浮かべた。 最初の2日間で苦しんだ理由はプレッシャーだった。 「毎日アンダーを出してと意気込んでいたんですけど、考えてもなかったプレッシャーを抱えてしまった。2日目からズーンみたいな。1個でもミスをしてしまい、1日でも落としてしまうと全然違うので」 4日間で3つもダブルボギーを打った。ドライバーも含めてショットも不安定だった。だが、3日目から「パー5では(バーディーを)無理に狙わないこと」と、考え方を切り替えてメンタルに余裕をもたせた。スイング修正、距離調整など、渋野が持つ対応能力の高さ、そして土壇場での勝負強さが3日目から発揮された。
110人中45位までに来季の米ツアー出場権
今年のQシリーズには110人が出場し、45位までに来季の米ツアーメンバーの資格が与えられる。だが、メンバーになっても米ツアーの出場が約束されているわけではない。Qシリーズの成績がそのまま試合に出場できる優先順位となり、レギュラーツアーに数多く出場するための条件は20位から上。それ以下だと下部ツアー(シメトラツアー)に出ながら、出場資格が下りてくる試合を待つことになる。 Qシリーズは通常のトーナメントのように1位を目指す試合ではないが、順位は一つでも上であることにこしたことはない。 今回の渋野のQシリーズ挑戦には、全米女子プロゴルフ協会(LPGA)も注目していた。 世界的にはまったくの無名だった2019年に海外メジャー「AIG全英女子オープン」を制し、欧米でも「スマイルシンデレラ」として一躍注目を集めた。ただ、優勝で得た米ツアーメンバー入りの資格を当時は「海外にはまったく興味がない」と話し、行使しなかった。 LPGAにしてみれば、メンバー入りを見送った2年前も「Why?」だが、あえてQシリーズからの挑戦を決めた今回も「Why?」。Qシリーズ直前には公式HPのトップで渋野を大きく取り上げ、「スタート地点に立てる場所にやっと来た」という渋野のコメントを掲載している。 新型コロナの感染拡大で昨年のQシリーズは、1次、2次の予選会(Qスクール)も含めてすべて中止となった。米ツアーには興味がなかった渋野が心変わりしたのは、「全英」優勝で得た資格を見送ることを決めた直後だった。2019年9月の国内ツアー「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」で同い年の畑岡奈紗と初めて回り、米ツアーの魅力とおもしろさを聞かされ、「一緒にやろうよ」と“勧誘”されたことで、心の中に変化が起きた。