野沢直子長女・真珠は美人と話題だけではなかった。柔術秘技で鮮烈デビュー
ダメージをうかがい腕を取りにいくが、ディフェンスされると、今度は長い足と柔軟性を生かしてシーナの喉の上に左足をねじこんで脛で圧迫しながらクビを捻じ曲げるフットチョークで締め上げたのだ。ブラジリアン柔術で「ゴゴブラッタ」と呼ばれる技。その使い手には、青木真也らのテクニシャンが多く、通常、下から使うケースが多いが、真珠は器用に上から脛と両手を使って苦しめた。 「ほんとは、あのままゴゴブラッタで決めたかった」 真珠は、UFCで活躍し、PRIDEでは火の玉ボーイ、五味隆典を沈めるなど「ゴゴブラッタ」の使い手であるニック・ディアスのテクニックを参考にしているという。 だがうまく逃げられ、決まらないと見るや作戦変更。すぐさま左腕をとって逆十字固めを完全に決めてタップ。プロデビュー戦とは思えない鮮やかな展開で1本勝ちを奪った。 「本当は立ったままクリーンな打撃で勝ちたかったけれど、チャンスだったので。柔術もグラップリングも練習している。想定したゲームプランになかった戦い方だったけれど、勝てて嬉しい。言葉にならないくらいの気持ち」。試合後のスマイルがいい。 初めての大舞台で、戦いの場はケージでなく四角いリング。しかも、シーナは打撃系を得意とするオールラウンダー。不安はあった。 「雰囲気に飲みこまれるんじゃないか、プレッシャーもあった。すべてが未知だった。でもファンを実感として感じて戦うことができた」 美貌とは裏腹のアイアンハート。自由奔放にお笑いの世界で暴れ回っていた母・野沢直子の遺伝子を受け継いでいる。 敗れたシーナは、RIZINの規定で、いつもの試合のようにグリースを顔に塗れなかったことも原因のひとつだと言い訳した。 「自分のスタイルで戦えなかった。真珠は強くて、何もかもうまくいかなかった。彼女は、猛練習をしてきたのだろう。ファイター、アスリートとして尊敬しているし、彼女には明るい未来が待っていると思う」 マッチメーカー、ブッカー、レフェリー、セコンドなど、“6足の草鞋”をはき、地元ミシガンでは「シーナ姉さん」と呼ばれるほど格闘界に顔の効くシーナが、真珠の持つ将来性と可能性を認めた。