いつも不安ですよ、いつ首切られるんだろうなって――芸人からMCへ「化けた」恵俊彰の考えるキャリア、そして相方への思い
「世の中の不幸を背負って立つみたいな、そういう表情は絶対にしたくない。逆に、明るい話題なら、どれだけ楽しめるかを考える。今年のサッカーW杯は、TBSには放送権がなくて、映像がほとんど使えなかったんですけど、さまざまな方向から情報を吸い上げて、どんどん膨らませていきました」 番組の年末企画「2022“時の人”に聞く~未来へのコトバ~」で今年の顔ともいえる著名人とも対談。コルスンスキー駐日ウクライナ特命全権大使、河野太郎、Ado、栗山英樹と、まったくジャンルの異なる人たちからカメラを前に初対面で話を引き出すのは、簡単なことではないだろう。 「自分には、専門的なジャンルってない。ニュース原稿が読めるアナウンサーでもありません。だから話すというよりは、聞くということですよね。MCとして何か回しているというよりは、本当に聞きたいことを聞いているというイメージなんですよ。興味があること、質問魔なんですよね」
人と会って話すことが本当に好きだと話す。ラジオ番組も含めて、対談経験は900人以上。会話には、積み重ねてきたテクニックがある。多くの人は恵と話すと、ついポロリと本音を漏らしてしまう。 「あまり答えたくないんだろうなって、雰囲気でわかることがあるじゃないですか。でもこちらとしてはなんとか聞きたいなと思う。そういう時は、しつこくいきます(笑)。できるだけ例え話をしながら、基本的に和やかに、笑いの空気に包みながら、ズバッと聞いてみるとかね、そういうことはありますね。でも、まったくダメなことはありますよ。そういう時ですか?……諦めます。何度もありますよ、そんなことも」
いつも不安ですよ。いつ首切られるんだろうなって
平日は、毎朝5時前に起床。風呂掃除をしたら、最初のメールでその日の方向性を確認し、紅茶を飲みながら新聞3紙を読む。ネットニュース、朝の情報番組をチェックしながらテレビ局に入り、スタッフと2時間以上打ち合わせをして、メイク、本番。 スタッフとのチームワークには自信がある。 「タレントだけが飛び抜けてても、スタッフだけが頑張りすぎていてもダメ。ちょうどいい頃合いに、化学反応のようなものが起こると思っています。とにかく、スタッフとしっかり向き合うこと。事前の準備ができていれば、自分の中でも安心してその日を乗り切れると思って」 それが長寿番組の秘訣だろうか。 「長寿番組の秘訣かどうかはわかりませんが、そこは大事にしています。でも正直なところ、いつも不安ですよ。いつ首切られるんだろうなって。4月と10月になると、僕らの商売はみんなそうです。明石家さんまさんともそんな話をしたことありますけど、みんな同じ気持ちを持ってる。番組が終わる時とか改編期には、毎回ザワつきます。これはもう、この世界に入った時から、ずっとある不安ですね」 とはいえ、毎日の仕事に関しては、ほとんどプレッシャーはない。 「穴を開けたくない」「いつも完璧でいなければ」などとも考えない。 「抗原検査とか、まめにやってますけどね。もう、顔が腫れていようがなんだろうが、晒してしまおうと思ってますよ。かっこつけてても仕方がないというか。とにかく元気ではいたいと思うんです。50の声を聞き始めた頃から、肘や膝が痛くなったりするんですよ、本当に。だから、毎朝のお風呂掃除で、ストレッチ。足やかかとを伸ばしながら壁を磨いて、屈伸して排水溝の掃除(笑)」 早朝の風呂掃除を続けて、8、9年ほどになる。最近はまだ日が昇らない中、一人でゴシゴシやっている。今年は大学院に通い始めたこともあり、起床時間がさらに早まった。 「何ていうか、これはもう、お清め的な習慣。以前は何もしない亭主でした。ありがたいことに子どもも増えて、奥さんも大変になって。洗濯も料理もできませんから、やれることといえば掃除なんです。お風呂とトイレの担当です」