「もう死んだ気で生きるとね、全部がありがたくて楽しいんです」――更年期のいまが成長期、大黒摩季の描く夢
「大黒摩季は6人いるらしい」。今でこそ素顔を晒さないミュージシャンも少なくないが、90年代、数年間に渡ってその実在は都市伝説だった。今年デビュー30周年を迎えた大黒摩季は、ライブにTVバラエティ番組出演にと精力的に活動する。一時は第一線から退き、不妊治療、病気療養に専念。専業主婦生活をするなかで引きこもったこともある。「私は死にぞこないのゾンビ。死んだ気で生きれば、すべてがありがたい」。50代の今が絶好調。一人になったからこそ見えたもの、新たに得た夢とは。(取材・文:山野井春絵/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース オリジナル特集編集部)
更年期の52歳が成長期って、イエーッ!て感じ
大黒摩季は、全国47都道府県をめぐるライブツアーの真っ最中だ。大黒のヒットといえば、アップテンポな楽曲ばかり。ライブは饒舌なMCも相まって、3時間を超えることもある。 「今、歌手として一番コンディションがいい。連日ライブとかハードな時も、何か違うものが出せるんです。ファンに『2日目もよかった』って言ってもらえたりする。ライブ三昧していた女子高生のころみたいに、伸びていく自分がたまらなく嬉しい。更年期の52歳が成長期って、イエーッ!て感じじゃないですか」 ゴージャスな巻き髪にピンヒール。パワフルなそのたたずまいは年齢を感じさせないが、年相応の疲れは否めない、と正直だ。
「もうね、トライアスロンみたい。ライブ後はヘトヘトで、ナメクジみたいに萎えてます、オババですから(笑)。でもね、お客さまが嬉しそうだと、調子に乗っちゃうんですよ。バンド、舞台、お客さまってあれこれ揃うと、ドラゴンボールじゃないですけど、もう最強。ツアーはとにかく体力が必要だから、ふだんより体重も増やすようにしてるんです。ガッチリしてるとか言われますけど、何か?って感じで、着たいもの着て。別に無理する必要ないし。結婚したってファンが減らず、露出したって増えないんだから、いかにみんな“楽曲ファン”かって、自覚ありますよ(笑)」 デビュー30周年。 はじめの5年間はメディアへの露出がほとんどなく、宣材写真のみが出回っていたことから、ミステリアスな存在だった。「大黒摩季は6人いるのでは?」とまで噂され、実在を疑われたこともある。当時の売り出し方は演出だったのか。 「あれは本当に、たまたま。私はソロアーティストだから、作るところからマスタリングが終わるまで、全部やるんですよね。そうすると、終わりが見える頃に次の発注が来る。一年364日スタジオっていう生活が3年間くらい続いて。もう、ほとんどこのスタジオで寝てました。だからテレビに出たりする暇がまったくなかったんですよ。そしたら何やら、謎になってると」