「母子手帳を見るのがつらかった」医療的ケア児である息子の育児経験から生まれた、1冊の育児ノートに込めた思い【体験談】
生翔くんは現在小学4年生。少しずつ成長を感じる日々
現在、小学4年生になった生翔くん。肢体不自由の子どもが通う特別支援学校へ通っています。最近では意思表示が増えコミュニケーションも変化してきたと山崎さんは言います。 「できることは少しずつ増えていっています。意思疎通がむずかしい中でも、『ああ、通じているな』と実感することが増えてきました。こういうときはこうする、という状況把握も少しずつできるようになってきて。たとえば学校へはいつも福祉タクシーで行っているんですが、福祉タクシーに乗り込む前に必ず私に手を上げてくれるんですよ。行ってきます!みたいな。そんな様子を見るととても成長を感じます。 特別支援学校でもいろいろな経験を積んでいますが、学校でも家でもいちばん好きなのは音楽です。私がよくピアノを弾くこともあり、赤ちゃんのころから毎日のように音楽に触れていたのが影響しているのかもしれません。中でも生翔は鍵盤楽器や打楽器が好きで、楽しい!とかおもしろい!という気持ちを全身を使って表現してくれます」(山崎さん)
体や暮らしに不自由があっても、心は自由でいてほしい
「うれしいこともつらいこともありましたが、今あらためて振り返り、私は息子を産んで本当によかったと心から思います。最初はほかの人をうらやんだり自分を責めたりもよくしましたが、それもきっと私には必要な過程だったのだと思います。 そのときの気持ちがなかったら今の私はいないだろうなと思いますし、それまで当たり前だと思っていたことも当たり前だと思わずに感謝の気持ちを持つようになりました。自分を認めて自分らしく生きていくことが大切だと気づけたのは、当時の暗い気持ちがあったから。 障害児や医療的ケア児を育てる親御さんたちに伝えたいのは、『悩むこともあると思うけれど、頑張り過ぎないでほしいということ。そして、いつも前向きでなくても、たまには後ろを向いてもいいし、そんな日々も自分にとって必要な時間だと思って過ごしてほしい』ということです。 cocoeのブランドメッセージにもその思いを込めていますが、障害や病気を持つ本人もそれを支える家族も、体や暮らしに不自由があっても心は自由でいてほしい。ママやパパたちの気持ちは私も痛いほどわかるので、これからもご家族の気持ちに寄り添っていきたいです。本当に微力ではありますが、これからも一歩一歩、私にできることを着実に進めていきます」(山崎さん) お話・写真提供/山崎絵美さん 取材・文/安田萌、たまひよONLINE編集部 自身の経験から「cocoe」というブランドを立ち上げ、障害や病気とともに生きる子どもたちの家族に寄り添い続ける山崎さん。私たち1人ひとりが関心を持ち、理解を深めることが、山崎さんのめざす“心が笑顔になる共生社会”の実現への一歩になるはずです。 「 #たまひよ家族を考える 」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることを目指してさまざまな課題を取材し、発信していきます。
山崎絵美さん(やまざきえみ)
PROFILE 医療的ケア児である息子の育児経験から、“心を笑顔に”というコンセプトで、障害児や医療的ケア児の家族の声をかたちにするブランド「cocoe」を立ち上げる。インスタグラムでは「cocoe」の活動や子どもたちとの暮らしを発信している。 ■cocoe https://t-cocoe.co.jp/ ●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。 ●記事の内容は2024年10月の情報で、現在と異なる場合があります。
たまひよ ONLINE編集部