京阪バス・休廃止のはずの路線で「ダイヤ改正」ってどういう意味? 掲示物から伝わる乗務員不足の切迫感
京阪バスは2023年11月1日、大阪府・京都府・滋賀県を走る複数の路線バスの廃止を発表しました。しかし、その後、筆者が廃止対象となった路線のバス停留所に行ってみると、なぜか「ダイヤ改正」を行う旨が掲示されていました。廃止のはずなのにダイヤ改正とはどういう意味なのか、取材で確かめることにしました。
廃止路線のバス停に「年に1回の運行となります」
京阪バスが23年11月1日付けで、公式サイトを通じて発表した廃止対象の路線バスと、それらの廃止予定時期(【】内)は次の通りです。 【23年12月16日】 ◎寝屋川営業所管内の「京阪守口市駅~大日駅~古川橋駅」など4路線 ※既存路線の運行区間を短縮して「摂南大学~京阪守口市駅」を新設 ◎門真営業所管内の「京阪大和田駅~南野口~門真団地」など3路線 ※3路線を再編統合した路線を新設(巣本~下馬伏間を廃止) ◎ダイレクトエクスプレス直Q京都号の京阪交野市駅~星田駅間と、京阪交野市駅~なんば(OCAT)~ユニバーサル・スタジオ・ジャパン間 【24年春】 ◎寝屋川営業所管内の「萱島駅~黒原旭町~萱島駅」など6路線 ◎大津営業所管内の「石山駅~膳所公園~義仲寺~大津駅~びわこ浜大津」 ◎京田辺営業所管内の「近鉄新田辺~美禅~草内」など2路線 廃止の理由は「全国的なバス運転業務の担い手不足」と記されていました。 ところが24年2月3日、筆者が移動中に京阪大和田駅前のバスターミナルへ立ち寄った際に、23年12月16日に廃止されたはずの路線の時刻表を何気なく見たところ、「年に1回の運行となります」と記されていたのです。運行日は「12月16日」となっていました。 調べてみると、同様の表示は京阪守口市駅前やJR星田駅前のバス停留所にもありました。いずれも、23年12月16日に廃止されていたはずの路線です。
「とても待っていられる状況ではありません」
廃止するのかしないのか、よくわからなくなってきたので、同社に問い合わせました。応対した総務人事課の担当者は「手続き上の問題」であり、当初の方針に変わりない旨を回答しました。 「手続き上の問題」とは、法的なルールにもとづく手続きのことです。道路運送法では、バス会社が路線バスを休止・廃止する際に、実施する日の6か月前までに国土交通大臣へ届け出るよう定めていますが、近畿運輸局自動車交通部旅客第一課によると、同社が届け出を行ったのは23年9月29日。同年12月16日まで約3か月弱しかなく、条件を満たせません。 その届け出と同時期に、同社はダイヤ改正の届け出も行っています。ダイヤ改正は1か月前までに届け出れば実施できます。この届け出によって12月16日のみの年1回運行に変更しましたが、運行日までに路線が廃止されれば、運行の必要はなくなります。つまり、実質的には同年12月16日に路線が廃止されるのと同じことです。 同社の担当者は「仕事量に対して必要な乗務員数が全然確保できておらず、仕事量を減らして対応しようとしても追いつかない状況です。本来なら(届け出から約半年が過ぎた)4月1日からにした方がきりも良いのですが、とてもそれまで待っていられる状況ではありません」と訴えます。 近運局の旅客第一課の担当者は「望ましい手続きではないことは伝えました」としながらも、手続きそのものは法的に問題がなく、「利用者周知を図った上で行ってほしいと伝えています」としています。