今年度は期間・エリアを拡大 採算確保の取り組みも 大阪・泉北ニュータウンの「AIオンデマンドバス」実証事業
大阪府堺市の泉北ニュータウンで10月1日から、予約を受けてAIで効率配車を行う「AIオンデマンドバス」の実証事業が始まりました。昨年度に続いて2回目となる今年度は運賃の妥当性などを検証する他、採算面などの課題解決につながる取り組みを進めて本格運行の実現をめざします。
移動しやすさの向上を目指して
起伏のある地形に立地する泉北ニュータウンでは近年、人口減少と高齢化が進んでいます。高齢者を含む住民の移動を支援する新しい交通サービスの創出を目指して、23年1月10日から約2か月間、22年度の「AIオンデマンドバス」実証事業が行われました。 今年度の実証事業は、23年10月1日から24年1月31日までの約4か月間実施の予定。停留所は前回の29か所から、要望の高かった泉北2号線沿いの商業施設付近を含む50か所に増やしました。運賃について、前回は原則200円で泉北高速鉄道の泉ケ丘駅発着時のみ300円としていましたが、今回は運行エリアの拡大にともない一律300円としています。 AIオンデマンドバスのシステムは、前回採用した自動車部品メーカーのアイシンが提供する「チョイソコ」から、JCOMのシステムに変更しました。同社は、社内営業員向けライドシェアサービス「J:COM MaaS」を堺市を含む全国21拠点で展開中。同サービスで蓄積したデータや運用ノウハウを、当事業に活用します。システム変更の理由について、実証事業に取り組む南海電気鉄道まち共創本部の今中未余子課長は「『チョイソコ』の満足度は非常に高く、あえて変える必然性はなかったのですが、泉北ニュータウンという土地柄に適したシステムも見ていきたい、ということもあって変更しました」と語ります。 10月1日の運行初日セレモニーで、堺市の加勢英哉・泉北ニューデザイン推進監は「AIオンデマンドバスは、移動支援という大きな課題の解決に必ずや寄与するものと確信しています」と期待を込めてあいさつ。南海電鉄の二栢(にかや)義典・常務執行役員は、「路線バスにとって、AIオンデマンドバスはライバルでもある」と悩ましさを口にしつつも、「それでも、新しい交通サービスの提供が泉北ニュータウンの発展には必要と確信しております」と実証事業への意欲を示しました。