「コロナ疲れは分かるが…」局面打開に必要なのは? 尾身会長が示す危機感
政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長は8日夜、政府が東京など3都府県に「まん延防止等重点措置」(重点措置)の適用を決めたことを受けて記者会見した。感染がなかなか収まらない要因として「人々の意識」と「ウイルスの密度」を挙げ、国民がコロナ疲れを乗り越えて感染対策に協力してくれるような環境づくりをすることが国や自治体に求められるとした。 【動画】東京・京都・沖縄「まん延防止措置」適用へ 西村担当相と尾身会長が会見
国や自治体が「汗を今まで以上にかく」ことが大事
「1年以上のコロナ疲れの意識が一般市民の中に広がっている」。緊急事態宣言解除の前後から人流増加が見られる現状について、尾身会長はこう慮った。 大阪府や東京都では宣言を解除した後に感染状況が悪化し、1か月と空かない間に重点措置が適用される事態となった。尾身会長は国や自治体が呼びかける営業時間の短縮要請などの感染防止対策に対し、国民からの協力が得られにくくなっていると指摘。「そろそろ社会全体がこういう(自粛)生活から解放されたいという気持ちがベースにある」と推察した。 解除後のリバウンド(感染再拡大)防止を掲げてきたコロナ対策だったが、ここへ来ての感染再拡大は、こうした「人々の意識」の問題に加え、「ウイルスの密度」そして「変異ウイルス」が要因となっているとした。 「ウイルスの密度が以前に比べて高くて、いろんなところで感染しやすい状況になっている。それに加えて、変異株という新たな要素が出てきている」 変異ウイルスは大阪や兵庫など関西圏で感染が広がり、東京など首都圏でも増えつつある状況で、「なかなか難しい局面に我々は入っている」。 しかし尾身会長はこう訴えた。「(国民が)コロナに疲れてきたのは分かるが、だからと言ってそれを受け入れてしまうと局面は打開できない。どうしても人々の意識と行動を変えてもらわなければ」。悲壮感にも似た危機感を漂わせた。 その上で、これからは単に国民に協力を求めるだけでは「乗り越えられない」と断じ、国や自治体に「人々がコロナに立ち向かう気持ちが起こる環境」をつくる取り組みを求めた。 具体的には、感染対策を講じている飲食店の認証や見回り、CO2(二酸化炭素)モニターの支援のほか、昨年から要望がありながら進まなかった高齢者施設の職員への集中検査などをしっかり実行することを挙げ、国や自治体が「汗を今まで以上にかく」ことが重要だとした。 こうした取り組みを可視化することで「それに呼応する形で一般市民も分かってくれる」と期待した。 「6月までが厳しい時期。ここをなんとか乗り越えないと医療の崩壊がまたぞろ起きる可能性がある」 4月12日からは高齢者向けのワクチン接種が始まる予定で、政府は6月末までにすべての高齢者に行き渡る分量のワクチンを配布する見通しを立てている。尾身会長はこの高齢者のワクチン接種までは大きな感染再拡大を防ぎたい考えを示した。