ブラックホール連星「はくちょう座V404星」は三重連星だった可能性
こちらは「はくちょう座(白鳥座)」の方向約8000光年先のブラックホール連星「はくちょう座V404星(V404 Cygni)」の想像図です。ブラックホール連星とはブラックホールと恒星からなる連星のこと。画像では、左側の恒星から中央のブラックホールへと移動したガスが周回しながらブラックホールへ落下する過程で形成される降着円盤や、双方向に放出されているジェットが描かれています。 大小さまざまなブラックホール連星を描いた動画 ブラックホールを取り巻く高温の降着円盤からはX線や可視光線といった電磁波が放出されており、ブラックホールの存在を間接的に知る手がかりとなっています。はくちょう座V404星は1938年には変光星として認識されており、1989年に日本の天文衛星「ぎんが」がX線の増光を検出。2015年には「ぎんが」の検出以来26年ぶりの増光がX線や可視光線で観測されるなど、最もよく研究されているブラックホールのひとつとなっています。
実はブラックホール1つと恒星2つからなる三重連星だった?
はくちょう座V404星はこのように以前から知られている天体なのですが、マサチューセッツ工科大学(MIT)のKevin Burdgeさんを筆頭とする研究チームは、実はもう1つの恒星が重力的に結びついた三重連星だとする研究成果を発表しました。3番目の星は冒頭の想像図でも右上に描かれています。 研究チームによると、近接しているブラックホールと恒星は約0.14天文単位(太陽から水星までの平均距離=約0.39天文単位の3分の1強)しか離れておらず、約6.5日周期で互いに公転し合っています。一方、3番目の星は内側の連星、すなわち従来の認識におけるはくちょう座V404星から少なくとも3500天文単位(太陽から冥王星までの平均距離=約39.5天文単位の90倍弱)離れていて、公転周期は約7万年と推定されています。 3番目の星の動きは2014年から星々の位置や動きを観測し続けている欧州宇宙機関(ESA)の宇宙望遠鏡「Gaia(ガイア)」の観測データを用いて分析されました。また、赤色巨星へ移り変わる段階にある3番目の星の年齢をもとに、研究チームは三重連星の年齢を30億~50億年と算出しています。